見えてきた久保建英の課題のひとつはシュート

久保建英の今の苦境と言えるような現状を見ていると、課題は主に2つあるように感じる。
ひとつ目は昨シーズンマジョルカで活躍していた頃から思っていたが、シュートにある。
ふたつ目はフィジカル的な問題…… とは言い切れないが、ボールを保持して相手に狙われたときにどうするのか、という課題が今シーズン浮かび上がってきたように思う。

久保建英の課題 1.シュート

久保は元々、アンダーカテゴリーの頃は「攻撃的なポジションなら、どこでもこなせる」という触れ込みだった。トップ下やサイドハーフはもちろんのこと、フォワードも十分にこなせていた。
バルサ下部組織の頃の詳細はチェックしていないが、日本代表のアンダーカテゴリーではゴールもよく決めていた印象だ。

これがトップカテゴリーに上がってくると、状況は少し変わる。
Jの舞台でもスペインでも、レベルや体格差に対応できるようになってくると、ドリブルやパスのセンス、フリーキックなどはトップカテゴリーでも十分に持っている才能を発揮している。しかし、シュート・ゴールの部分に関しては、トップカテゴリーでは思うようには通用していないように見える。
J1通算で24試合5ゴール、ルヴァンカップと天皇杯を合わせて36試合7ゴールという成績はまずまずだったかもしれない。

これがスペインに渡ってからは、シュートの面でいまひとつ通用しておらず、数字にも表れている。
2019-2020シーズンのマジョルカでリーガ35試合4ゴール、国王杯1試合0ゴール。シーズン前半に途中出場が多かったとはいえ、少し物足りない。
今シーズンがビジャレアルとヘタフェ合わせてリーガ23試合0得点、国王杯1試合0得点、ヨーロッパリーグ(EL)5試合1得点。リーガでは実プレー時間が少ないとはいえ無得点、カップ戦は出場時間十分でも1得点しか奪えていない。

レアルが久保を獲得したときに紹介動画を流しているが、日本代表のアンダーカテゴリーのものはゴールシーンもそれなりにあったが、Jリーグのものはゴールシーンは少なくテクニックシーンがほとんどだった。
久保がテクニシャンと言われているのも、テクニックが突出しているというのもあるが、ゴールが少ないというのもあるように感じる。

マジョルカで上げたゴールを振り返ってみると、最初のゴールは左足でのミドルを豪快に決めている。久保にとって得意な形のひとつだろう。
最初のゴールで相手からは利き足の左が警戒されたようで、2,3点目は逆足で決めている。威力はそれほどないが、どちらもディフェンスの股下と通しているテクニカルなシュートだ。
4点目はこぼれ球を決めた形なので、特にシュートの良し悪しはない。

シュートを打つ際にフェイントを入れたり、股下を抜いたりといったテクニック的なものは申し分ないし、それが久保のひとつの強みであることは間違いない。ただ、放たれたシュートがどれも素直なストレート性のもので、威力がそれほどあるとは言えない、そのあたりが気になる。明らかに不足している点だと感じる。

久保が決めたゴールはどれもゴール正面に近い位置取りからで、それほど角度はついていない。
一方で角度がついた位置からストレートにシュートを放って止められてしまった場面がある。ゴールから45度ほどの角度がついたペナルティエリアの角付近、左右逆になるがデル・ピエロが得意にしていたゾーンからシュートを放った。ストレート性のシュートはキーパーにストップされている。
もしデル・ピエロの利き足が左だったなら、ゴールの右手45度のこの位置から、対角のゴール左上隅を狙って、カーブをかけて山なりのシュートを放ったことだろう。それが一番キーパーの手が届かない位置を通過するからで、デル・ピエロの得意とするシュートだ。
久保には、今のところそういったシュート技術がない。しかしサイドのポジションの選手であれば、少なくともカーブをかけたシュートは身に付けていかなければならない。

その数試合後の第33節セルタ戦で、右サイドバックのアレハンドロ・ポソがゴールを決めている。角度は30度ほどしかついていなかったが、似たような右サイドの位置から左足で放ったグラウンダー気味のシュートは、カーブ描きながらゴールの左下隅に収まった。
ポソの利き足は右なのだが、右サイドのポジションとして、左足でのこういったシュート技術も身に付けているということだ。

久保のシュートはストレート性のものがほとんどで、威力的にも別段強いわけでもない。それは、アンダーカテゴリーの頃には十分に通用していたが、トップレベルでは通用しづらくなっている。現状では、テクニックの部分で相手のタイミングを外したり、駆け引きの面で逆を突くなどしてゴールにつなげているが、それだけでは心もとない。
やはりこの形からなら確実にゴールを決められるというような得意な形、あるいは久保建英といえばこのシュートというようなものは、ひとつは持っておきたいところだ。それが数字の上での上積みにもなるし、苦しいときに自分やチームを助ける力になる。

現状のシュート力でもゴールにつなげようとするなら、もう少しゴールに近づかなければならない。そのためには、もっとゴールに近い位置まで進出するか、ゴールに近いポジションでプレーするかのどちらかが必要だ。
具体的に言えば、現状の右サイドのポジションから、よりゴールに近い位置まで進出するということ。メッシのようにゴール前までドリブルで進んだり、リヴァプールのサラーのように積極的にペナルティエリア内に侵入していくということだ。
ゴールに近いポジションというのは、トップ下のポジションになるが、そこで日本代表における南野や「ドルトムントの小さな魔術師」と称された香川のようなプレーをすることだ。
ゴールに近い位置からのシュートであれば、現状の久保のシュート力でも十分にゴールは奪えるに違いない。
しかし、トップ下のないフォーメンション、あるいはトップ下があっても久保はほとんどサイドのポジションしか任されていないのが現状なので、そこを変えていくだけの何が必要だろう。

一方、フリーキックでの直接ゴールという観点で見ても、アンダーカテゴリーでは割と決めていた。その頃から、見ていて「今はこれでいいけど、このままではトップカテゴリーでは通用しないじゃないかな?」と思っていたが、その通りになっている感じがする。
本人は相変わらずキッカーを主張するし、チームメイトも任せてくれる場面は多い。しかし、アシストとしては悪くないのだが、直接ゴールの匂いはあまりしない。
このフリーキックに関しても直線的なシュートになっていて、カーブはかけているようだが、それほど大きくは曲がっていない。
中村俊輔、ベッカム、ミハイロビッチといった往年の名手から現在に至るまで、フリーキックの名手と呼ばれる選手は、その大半が曲がって落ちるシュートが代名詞だ。メッシもこの部類に入る。
そうでなければ、圧倒的なシュート威力の持ち主で、ロベルト・カルロスはその筆頭だろう。そのロベカルも威力だけではなく、カーブのかけ方もかなりのものだ。
他には駆け引きのうまさ、というのもあるだろう。
久保はフリーキックにおいても、直接狙うにはカーブのかけ方や威力の面でまだまだの状態。いい線は行ってるとは思うが、中村俊輔とは言わないまでも、本田圭佑や遠藤保仁や中田英寿くらいに決めるには、まだ何か物足りない。駆け引きの部分はまだ若いので、そこは年を重ねるごとに習熟していくに違いない。

長くなったので、ふたつ目の課題については次回としたい。

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