久保建英のもうひとつの課題はボール保持

久保建英の今の苦境と言えるような現状を見ていると、課題は主に2つあるように感じる。
ひとつ目の課題「シュート」については、前回記事で述べたので、今回はふたつ目の課題「ボール保持」について。

久保建英の課題 2.ボール保持

ふたつ目の課題は、今シーズンになってから目につくようになったが、ボール保持に問題が生じているように見える。
ボールを受けてドリブルをすると、後ろから追いすがって来る相手のスライディングを受けて倒れる。あるは、パスを受ける瞬間に体を寄せられて潰される。そういったような場面が目に付くようになった。倒れた久保はファールをアピールするが、ほとんどはノーファールだ。
昨シーズンのマジョルカでもそういったシーンは見られたが、それほど気になるほどではなかったし、多くは相手のファールだった。今シーズンはマークが厳しくなったということもあるとは思うが、「これで久保は止められる」というのが対戦相手が分かってきたということもあるように感じる。

これは体格的な問題とも無縁ではないが、現状を見ているとそれだけではない気がする。
久保と同じようなポジションを中心に、ヨーロッパである程度活躍した日本人選手の身長をリストアップしてみた。

182 本田圭佑
180 鎌田大地
179 原口元気
178 中村俊輔
177 名波浩
175 柴崎岳 小野伸二 中田英寿 松井大輔
174 南野拓実 岡崎慎司
173 伊藤純也 清武弘嗣
172 久保建英 香川真司 堂安律
170 大久保嘉人
169 乾貴士
167 中島翔哉 三好康児

2列目というポジションということもあり、センターバックやボランチのポジションに比べたらずっと低身長の選手が多いのだが、それでも久保の172cmはだいぶ低い方だ。

180cm前後の本田や鎌田、原口あたりは、体格的に大きな問題になることはない。

175cmあたりになってくると、体格的な問題は大分出てくる。

こちらの記事でも述べた通り、柴崎は線の細さもあってスペイン1部の舞台ではボランチとしては通用しておらず、トップ下としてがやっとの状況。
中田は別格としても、小野や松井はテクニック的なもので補っている面は大きいが、それでも当たり負けをしているような印象はない。

さらに下を見ていくと、若干当たりの弱い印象の選手も見られるが、それ以外はそれほど当たりに弱い印象はない。
個人的には大久保と乾が170cm以下というのは意外で、もう少し上背はあると思っていたが、この身長でスペイン1部の舞台で十分に通用している。
南野と岡崎の二人は174cmだが、5大リーグの中でも特に当たりがきついイングランドのプレミアリーグで通用している。岡崎はスペイン2部を経て1部でも、もちろん当たり負けしている印象はない。
久保の上背でも、やりようはあるということだ。

この中で当たりの弱い印象があるのは、香川と三好あたりになる。上背がないだけでなく、線が細い。しかし、だからといって容易につぶされたり、簡単にボールロストをしているわけではない。テクニックと状況判断で、それを防いでいる。
香川を例に具体的な話をするが、三好も同様だ。ボールが自分の所に入った時、すぐに後ろからチャージをかけられそうな状況ならば、ワンタッチでボールを入れた選手に戻したりしている。日本代表でも、本田や香川がよくやっていたプレーだ。そうやって不要なチャージを受けないようにして、安易なボールロストを防いでいる。
一旦ボールを戻した後、香川はクルリと反転して後ろから来た相手をかわす動き出しをして、そこへ再度ボールが入れば、チェックに来た相手選手を置き去りにできる。そういったテクニックと状況判断をしているのは見ていてよく分かる。

これが小野あたりになってくると、そういったアクションももちろんするが、ワンタッチでパスを捌いてしまうような場面も多くなってくる。視野の広さと状況判断のレベルが一段階上なのだろう。

何らかの方法で体格的に劣っていても潰されたり、ボールロストすることを防いでいるのは他の選手も同様で、それぞれが何らかのテクニックは得意としている。
松井は「ル・マンの太陽」と言われたほどのチームのキープレーヤーだったが、ドリブル中の手の使い方が上手く、相手を寄せ付けないうまさがあった。
いずれにしろ、チャージを受けない、受けても問題ない形でボールを受ける・保持するということが大事で、その場その場での状況判断が大事だ。

175 ダビド・ビジャ
170 メッシ ダビド・シルバ イニエスタ シャビ

言わずと知れたスペインが誇るタレントも少し挙げてみた。このあたりの名選手になれば、テクニックも状況判断も超一流レベルだ。
久保は「日本のメッシ」とよく言われたが、その本家本元のメッシは久保よりも2cm低い。
タイプとして、より似ているというダビド・シルバも同じく170cm。
172cmの身長は、リーガ・エスパニョーラの舞台で通用しないということには直結しないだろう。

久保はJリーグの頃は、若い故に体格面でのハンデがあり、体の成長と共に徐々に適応していった。
スペインに渡ってからもそれは変わらず、昨シーズンの新型コロナの影響による中断開けの際に、肩周りが逞しくなったのが話題になった。このあたりの様子は、小野がオランダで絶頂期だった頃の体格に似ている印象があり、必要な筋力強化はある程度整ったのではないかと感じる。
あと必要なのは、ボールを保持するためのテクニックと状況判断の面での向上で、それが十分になれば、現在の停滞気味の状態を抜け出して、パスやドリブルといった久保本来の能力が今以上に生かされるに違いない。
今は少し、そのあたりの成長を待たねばならない時期なのかもしれない、そんなふうに見える。

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