9月19日に行われたスペイン・ラ・リーガ第5節マジョルカ対ビジャレアルの試合で、引き分けに終わった試合だったが、勝った試合以上に久保建英にとって内容がある試合となった。
久保建英の成長の証が十分に感じられたビジャレアル戦
試合前にもビジャレアル指揮官のウナイ・エメリ監督は「久保も成長して、望んだことが出せるようになってきている」とコメントしていたが、その通りの試合になった。
ビジャレアル在籍時には、エメリ監督から再三「タケー!」という声とともに攻撃後の守備に対して叱責が飛んだが、仮にこの試合での出場がビジャレアル側からだったとしても、そのような場面は見られなかったのではないだろうか。それくらい、この試合での久保の守備での貢献度は高かった。
また、昨シーズン、ボール保持に関しては課題となっており、得意のドリブル突破をはかろうとするたびに簡単に潰されてしまう場面は度々見られた。
それは、東京五輪でもしばしば見られ、遠藤航の力強いドリブルの頼もしさと対比するように、久保の弱点として浮き彫りになっていた。
ところが、東京五輪を終えて、スペイン・ラ・リーガが開幕してみると、久保がボールを持ったときに簡単に潰されてしまうような場面はほとんど見られなくなっていた。
ボールを持って、ドリブル突破をはかる。もちろん潰されて倒れる場面もあるが、それは「これはしかたない」と思わせる状況がほとんどで、倒れた場合の大半はファールをもらっている。
昨シーズンまでの簡単に潰されて、倒れてファールをアピールするものの、まったくファールを取ってもらえない状況とは明らかに違っているのだ。
8月6日の東京五輪3位決定戦から、8月14日のラ・リーガ開幕戦まで1週間ほどしかなかったのだから、その間になにかがあったわけではない。だが、東京五輪で何かをつかんで、ラ・リーガ5試合と代表2試合の間に、それを実践できるようにしていったということなのではないだろうか。あるいは、そもそも昨シーズンを通じて取り組んでいたものがあり、それがようやく実を結んできたということなのかもしれない。
今シーズンの開幕前に、久保の課題は「シュート」「ボール保持」「守備」の3つにあるということは、以前の記事で述べた。
シュートに関しては、今シーズン開幕から、久保はまだそれほど数を撃ってはいない。
しかし、東京五輪で改善の兆し、あるいは改善に取り組んでいることが感じられたため、今後の経過を見守りたい。
ボール保持に関しては、今シーズン早い段階での克服が望まれているが、開幕5試合を通じて十分に克服しつつあることが見て取れた。もう少し時間がかかるかと思っていたが、開幕からここまで容易に潰されることがほとんどなくなったのは、たまたまではないようだ。
特に守備の強度の高いビジャレアルを相手に、十分に通用したことを考えれば、十分に及第点を与えていいだろう。
この点は非常に大きな収穫で、ここの克服に目処が立てば、久保が本来持っている多くの技術・才能が発揮されることにつながる。それらの一番土台になる部分だからだ。
エメリ監督の「望んだことが出せるようになってきている」とのコメントには、守備に関する面だけではなく、こちらの意味合いを含んでいるのかもしれない。
まったくの予想外だったのは、守備に関しての成長で、これについての課題克服はもっと先になるかと思っていた。ところがこの試合での守備の貢献度は高く、攻守両面に渡って力強さ、頼もしさがが感じられた。
久保は開幕の頃「90分間走れるし、守備もできる」といったようなことを語っていたが、十分にそれを証明してみせた。
開幕5試合を通じて、「ボール保持」「守備」の部分で改善はしているとは見ていて思っていたが、この試合では一気にそれを促進したような印象を受けた。
相手が古巣のビジャレアルということで、「フィジカル」「守備」の面での弱さを指摘されたエメリ監督の前で、それを克服しつつある成果を見せたかったのかもしれない。