試合展開
初戦からのスタメンの変更は、左サイドハーフが三好康児から相馬勇紀に変わったのみ。
この試合もベンチ外の冨安健洋のポジションには、今回も板倉滉が入った。控えメンバーのディフェンダーも旗手怜央と橋岡大樹しか居ないことから、森保監督は富安の代役は板倉に任せると決めた様子。
酒井宏樹からのスルーパスを、走り込んだ堂安律がグラウンダーのクロスで折り返すと、中央から走り込んだ久保建英がゴールに押し込んだ。開始早々の6分に日本が先制する。
直後の8分、敵陣で奪ったボールを相馬がエリア内からマイナスに折り返すと、ゴール前で林大地の空振りなのかスルーなのか分からないが、逃したボールを背後の堂安がキープ。ここは、相手ディフェンダーに対応されてシュートには至らない。
ところが、特に日本側からは誰も抗議しなかったが、VARの介入が入り、主審がオンフィールドレビューを実施。結果的に判定が変更されて、相馬がクロスを入れた際の接触がファールとなり、PKを獲得する。
このPKを堂安が決めて、日本は2-0とリード。
序盤に予想外の2点を得て、心理的にもゲーム展開的にも優位に立った日本は、多少の焦りも見えるメキシコの攻撃をしのぎながら的確に反撃をする。
しかし、チャンスはいくつか作るもゴールには結びつかない。
68分、田中碧のロングフィードに対して、相手に競り勝った堂安が倒されて、メキシコに一発レッド。久保が直接狙ったFKは壁に阻まれる。
日本は数的優位を得たが、その後もやはり追加点には結びつかない。
逆に、終盤一人少ないながらも攻勢をかけてきたメキシコに押され始め、85分にFKからゴールを割られてしまう。
さらに、アディショナルタイムにもFKからのヘディングシュートで危ない場面があったが、ここは谷がセーブして防いだ。
今日も、久保のゴールは良かった。
クロスのボールに飛び込んで決めるのは、スペインに渡ってから一度も見られなかった形。
ゲームメーカーとしてクロスを入れる方の役割を多く担っていたからとも言えるが、自ら決めるのであれば、チャンスでゴール前に飛び込む姿勢も大事だ。
この五輪代表チームでは、自ら決めるという意識が高いというのが、プレーを見ていても伝わってくる。
堂安が居るからというのも大きいのだろう、チャンスメイクもすること、チャンスを生かして決めること、この両方の役割を互いにいつでも変えるだけのコンビの良さが二人の間にはあり、信頼関係も十分に構築されている。
これまでの試合もそうだが、この試合でも遠藤航の強さは際立って見えた。
相手からボールを奪う、デュエルの強さは相変わらずで、さらに奪ったボールをドリブルで持ち上がる際に、とにかく倒れない。
相手一人が、横や後ろからかかってきても、そのままドリブルで持ち上がっていく。前方を塞がれ、2人がかりで来られるような状況になって、ようやく止められたり、パスを選択するような状況だ。
この強さは、見ていて実に心強いものだった。
これが、同じようなシチュエーションの久保を見ると、明確に遠藤との格差が見て取れる。
1対1で相手と相対し、ダブルタッチなどのテクニックでかわすスキルは見事なものだ。そのままドリブル持ち上がっていくと、追いすがった相手や横から来た相手一人のチャージに対して、すぐに倒れてしまう。ファールをアピールするが、その大半は主審はファールをとってはくれない。今シーズンのラ・リーガでよく見られた光景だ。
シュートの方の課題は改善の兆候を見せ始めているが、もう一つの課題についてはまだまだのようだ。
しかし、追加点が欲しい、追加点を入れてもおかしくはない状況で、この試合でも追加点が入れられなかった。
グループリーグは勝ち点で並ぶことも考えられるので、得失点差や総得点を稼げなかったところは不安材料だ。結局、2試合とも勝利は収めたものの、最小得点差となっている。
特にこの試合では、終盤のメキシコの攻勢で1点を失っており、最後に同点に追いつかれる可能性もあっただけに、少しヒヤリとする場面だった。
日本の決勝トーナメント進出条件
裏カードのフランス対南アフリカは、後半から試合が動き始めると、そこから壮絶な打ち合いとなった。南アが1点リードすると、フランスが追いつくという展開を3度繰り返したあと、フランスが最後に1点とって4-3で勝利した。
日本としては、南アが勝ってくれれば決勝トーナメント進出が決まったが、フランスが勝ったことで、メキシコ、フランスにも決勝トーナメント進出の可能性が残った。
グループリーグ2試合が終了した時点での順位表、決勝トーナメント進出条件は以下の通り。
順位 | 国 | 勝ち点 | 勝 | 分 | 負 | 得失点差 | 得点 | 失点 | 最終戦の相手 |
1 | 日本 | 6 | 2 | 0 | 0 | 2 | 3 | 1 | フランス |
2 | メキシコ | 3 | 1 | 0 | 1 | 2 | 5 | 3 | 南アフリカ |
3 | フランス | 3 | 1 | 0 | 1 | -2 | 5 | 7 | 日本 |
4 | 南アフリカ | 0 | 0 | 0 | 2 | -2 | 3 | 5 | メキシコ GL敗退決定 |
○ | 1位で決勝T進出 |
△ | 1位で決勝T進出 |
●1点差 | メキシコが△●なら1位で決勝T進出 フランス2位 |
●1点差 | メキシコが○なら2位で決勝T進出 メキシコ1位 |
●2点差以上 | メキシコが△●なら2位で決勝T進出 フランス1位 |
●2点差以上 | メキシコが○なら3位でGL敗退 メキシコ1位 フランス2位 |
日本がフランスに、勝ち または 引き分け ならば、メキシコ、フランスは勝ち点で及ばず、日本の1位が確定する。
また、メキシコが南アフリカに、引き分け または 負け ならば、メキシコの勝ち点が日本に及ばないため、日本の決勝トーナメント進出は確定する。
日本がフランスに負けた場合、日本はフランスに勝ち点6で並ばれる。
この場合、1点差の敗戦であれば、得失点差で日本の順位が上になり、2点差以上の敗戦であればフランスの順位の方が上になる。
この場合、メキシコが南アフリカに勝った場合は、日本はメキシコに順位で上回れてしまい、3位でグループリーグ敗退となる。
ということで、日本はターンオーバーをして主力を休ませることは、難しくなったかもしれない。フランスが自力で決勝トーナメント進出を決めるためには、日本に2点差をつけて勝つ必要があるため、フランスは本気で試合に望んでくるだろう。
やはり、メキシコ戦で追加点を上げて、得失点差をあと1点でも2点でも稼いでおくと、もう少し楽な展開になっていただけに残念だ。
もちろん、日本として一番楽な展開だったのは、フランスが南アフリカに負けてくれれば、フランスのグループリーグ敗退が確定し、最終節でメキシコと南アフリカが勝点を争うため、最終節を待たずに決勝トーナメント進出が確定していたのだが。
他グループの展望
グループBは、4チームが1勝1敗の勝ち点3で均等に並ぶ展開。
どこが決勝トーナメントに進出してくるか分からない状況だが、どこが出てきても他のグループに比べれば怖さはないだろう。
このグループBは、日本が決勝トーナメントに進出すれば、必ず1回戦で当たる。恐らく、日本はグループリーグ最終節も主力の大半を使って、決勝トーナメント1回戦でターンオーバーをする形になるのではないだろうか。できれば、韓国は避けたいところだろうか。
グループCも、グループBほどではないが混戦模様になっている。
強豪のスペインとアルゼンチンが勝ち点差1で最終節の対戦となっており、どちらか一方がグループリーグで敗退する可能性が高い。
2位のオーストラリアが漁夫の利を得られそうな形勢だが、最下位のエジプトも勝てば希望がある。
グループDは、今節で引き分けたもののブラジルが1位通過しそうな気配。
2位のコートジボワールと3位のドイツが直接対決になっており、どちらかが残りの1枠を争う展開になりそう。
サウジアラビアのグループリーグ敗退は確定。