2021年夏、日本人選手の海外移籍動向3

2021年夏の日本人選手の海外移籍動向、その3。

出場機会優先

今期は十分な出番が得られなかったことで、来季は十分な出場機会が得られるクラブで活躍をしたい3人。

久保建英

昨季は昇格組のマジョルカでブレイクを果たすも、チームは惜しくも降格。
今期前半は上位チームのビジャレアルで躍進が期待されたが、思うようには出場機会が得られなかった。後半はヘタフェに移籍するも、個人的に心配した通り、ポゼッションをしない守備的なチームスタイルと久保の持ち味はかみ合わなかった。十分な出場機会が得られないまま、今シーズンを終了。

シーズン終盤から来季の憶測は色々されており、指揮官が変わる事でのレアル帰還、レアルの財政事情から方針を転換しての売却、再度レンタル、といった3つの方向性がある。

レアルに帰還して、課題となっているボール保持の面での強化というより、何らかの解決策をじっくりと練るのもひとつの手だとは思う。しかし、現実的にはEU圏外枠がまだ空いておらず、トップチームでの出場機会が訪れる可能性は小さい。
久保の今期の年俸は250万ユーロ(約3億円)と言われており、かなりの高額だ。そのため、そこがネックになり売却という可能性はないとは言えないが、見限られるにはまだ早い気がする。

といった感じで、来季もレンタルでの武者修行というのが現実来な線に思える。久保のレンタル先としては、現在の所、べティス、昨季所属した昇格組のマジョルカ、そのマジョルカの指揮官だったビンセンテ・モレノ監督が現在指揮を執る同じく昇格組のエスパニョール、といったところが挙がっているが、今後まだ候補は増えてくるはずだ。
実は、ヘタフェの残留を決めた第37節のレバンテ戦でゴールを決めた後、少し経ってから心をよぎったのは「実は久保の今シーズンは、ここから始まるのではないか」というものだった。シーズンを終えた久保は、現在東京オリンピックに向けてU-24日本代表で活動中で、今シーズンクラブで出番に恵まれなかったことで疲弊はしておらず、コンディション的には十分なはずだ。現在のU-24オリンピック代表チームではチームの柱として主役的な存在で、本番でも同様の活躍が見込める。ここでの活躍が、来季のレンタル先に大きく影響してくるのは間違いないだろう。
久保の来季はオリンピック明け、もしくはオリンピック終盤あたりに決まるのではないだろうか。

南野拓実

南野の去就は、久保以上に読めないかもしれない。

所属元であるリヴァプールのユルゲン・クロップ監督の発言を聞いていると、一貫して南野はキープしておきたいように感じる。
一方で今期はリヴァプールでそれなりの出番があるはずだったが、ディフェンスの要ファン・ダイクの負傷離脱をきっかけに守備陣に離脱者が相次ぎ、チームの高さのバランスの面で南野の出場機会は大幅に奪われた。
元々リヴァプールの攻撃陣の主力は軒並み身長は低めで、モハメド・サラー、サディオ・マネの両翼のエースに加え、昨季に獲得したインサイドハーフのチアゴ・アルカンタラも170cm台半ば。その中でCF(偽9番)ロベルト・フィルミーノの180cmは貴重で、そのバックアップにあたる南野の174cmは確かに心もとない。
では、来季はそこが改善されて、南野の出番が得られるのかは、これからの選手の出入りによるとしか言えない。

一方で、クロップも「サウサンプトンなら」ということで、冬の移籍市場終了間際にレンタルとなった。そのサウサンプトンでは、移籍直後にブレイクをしたが、その後は尻すぼみの感があり、出場機会は徐々に減っていった。
ところが、シーズン終了間際になると再び出番が増えると同時に、指揮官のラルフ・ハーゼンヒュットル監督は完全移籍での獲得交渉を口にし始めた。
その後、移籍交渉が進められ、条件面からサウサンプトンは撤退したとの報道も出てきてはいるが、どうなるだろうか。

クロップ監督は長期計画として手元に残しておきたい意向だが、経営陣は放出容認という報道もある。
移籍となれば、プレミアリーグ内なら候補はサウサンプトンということになるが、個人的にはやはりドイツ・ブンデスリーガの方が水が合う気がする。ザルツブルク時代にドイツ語はマスターしており、言葉の問題もまったくない。
実は、リヴァプール移籍と聞いて、当時に心は沸いたが、同時にリヴァプールのようなトップクラブでなく、もうワンステップ踏めるようなクラブの方が出場機会やレベルの面でよかったのではないかという思いもあった。ステップを踏むなら、やはりドイツ最適で、ザルツブルクと同じレッドブルグループのライプツィヒ、あるいはドルトムントあたりが良かったのではないだろうか。
現在の移籍先としても両チームは最適と思われるし、それに加えて王者バイエルン、フランクフルトあたりのチームも適任だ。なぜならこのあたりは、UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)やUEFAヨーロッパリーグ(UEL)の出場権を持っているだけでなく、なにより今ドイツで流行っているラングニック派の監督が来季の指揮を執る。
南野が元所属したザルツブルク、同じレッドブル系列のライプツィヒの両チームはラルフ・ラングニックが大きく関わっており、先に挙げたドイツ4チームの来季指揮官やサウサンプトンのハーゼンヒュットル監督もその流れを組む。クロップ監督は直接の関わりがないが、ラングニックには大いに影響を受けていると言われており、クロップが「サウサンプトンなら」と南野のレンタルを容認したのも、そのあたりが理由のようだ。
南野の移籍先としては、ドイツの上位チームは適切だろう。

一方で、シーズン中からスペインのセビージャが南野の獲得に関心を持っているという報道は盛んにあるが、日本人にとって鬼門になりがちなリーグ。うまく適応できるかは行ってみないと分からない面がある。
セビージャは今期を4位で終えているので、来季はUCLに出場する。

三好康児

2019年夏、コパ・アメリカでの活躍もあって、所属元の川崎フロンターレ(※)からベルギー1部ロイヤル・アントワープへとレンタル移籍。
 ※正確には、レンタル先の横浜F・マリノスとのレンタル契約を解除

完全移籍となった2年目の今季、安定して試合に出れたとは言い難い。本来のポジションであるトップ下のポジション争いに敗れるも、右ウイングバックのポジションを獲得、慣れないながらも成果を出した。
ところが、年末に突然イヴァン・レコ監督が退任、中国からの高額オファーを受けて引き抜かれた形だ。直後に三好自身が新型コロナウイルスに感染し、自宅待機によりチームから離脱。これにより、確保していた右ウイングバックとしてのポジションは、完全にリセットされてしまった。
後半戦はほとんど出場機会が得られずに、レギュラーシーズンが終了した。

転機が訪れたのは、チャンピオンシッププレーオフからで、それまでトップ下のポジションだった選手の来季移籍が決まり、三好に本来のトップ下でのチャンスが巡ってきた。おそらく来季を見据えての起用であるはずだ。
日本人対決となった初戦のヘンク戦でフル出場すると、最終的には敗れたものの、一時は逆転となるゴールを決めて結果を残す。その後も最終節を除いて、スタメンから十分な出場時間を得ることができた。

伊東純也2アシスト、三好康児1ゴール、ヘンクが競り勝つ
ベルギー・リーグがレギュラーシーズンを終え、プレーオフへと入った。レギュラーシーズン1位から4位で争われるチャンピオンシッププレーオフに、三好康児の所属するアントワープが2位で、伊東純也の所属するヘンクが4位で、それぞれ進出した。 レギュラ
ベルギーPO、伊東純也ヘンク2位、三好康児アントワープ3位
ベルギー・リーグのチャンピオンシッププレーオフ第5節が5月20日に行われ、クラブ・ブルッヘがアンデルレヒトと3-3で引き分けて、最終節を残して優勝を決めた。来シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)の本戦出場権を獲得。 伊東純也の所...

アントワープとの契約はあと2年あるため、来季は同クラブでトップ下でのポジションを確保して、レギュラーとして出場し続けること目指すことになるのではないだろうか。

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