欧州や南米といった主要な海外リーグではシーズンオフに入り、東京オリンピックに加えてユーロやコパ・アメリカといった各国代表チームの活動が活発になっている。それと並行して各クラブでは来季に向けた戦力を整えるための移籍交渉が進められており、徐々にその話題も表面化しつつある。
ステップアップ確実視
冨安健洋
2019年夏にシントトロイデンからボローニャに移籍、セリエAでも持ち前の実力を発揮し、十分すぎるほどの活躍を見せると、多くのチームからの注目を浴びている。
今シーズン開幕前にACミランが獲得に乗り出すも、ミランの1500万ユーロ(約18億8000万円)の提示に対し、ボローニャは2000万ユーロ(約25億円)を譲らず合意に至らず。
ボローニャとしては、冨安が必要な戦力であることに加え、この先の伸びを考えれば安売りはしない方針。ただし、十分な金額を払うオファーがあれば、売却はいとわない。これは、「若手を発掘して価値を高めて売る」というクラブの方針からすれば当然のこと。
ミランはその後も継続して獲得を検討おり、冬の移籍市場で1500万ユーロ(約19億5000万円)、その他ボーナス込みで2000万ユーロ(約26億円)近いオファーを出したようだが、これも成立せず。
シーズン中にも他に、以前から注目のローマ、セリエA優勝のインテル、プレミアリーグのエバートン、ブンデスリーガのレバークーゼンといった名前も挙がっていた。
現状は同じセリエAのアタランタが有力で、冨安本人との合意には達したという報道も出ている。
ボローニャ側は冨安に2500万ユーロ(約31億3000万円)の値段を付けており、2000万ユーロ(約26億6000万円)以下で売るつもりはないと発言。アタランタからレンタルのムサ・バロウの買取に1500万ユーロ(約20億円)の支払いが生じており、これを絡めた交渉が続いている模様。
アタランタは、今期セリアAを3位で終えて、来季のUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)出場権を持っている。移籍がまとまれば、冨安はCLの舞台に立つのは確実だ。
伊東純也
2019年2月に柏レイソルからベルギー1部ヘンクへ期限付き移籍。2020年3月にヘンクが買取オプションを行使して完全移籍となった。
移籍当初から持ち味である縦への突破を武器に活躍、初年度のリーグ優勝に貢献すると、翌シーズンはチャンピオンズリーグにも出場。
今シーズンは内に切れ込むことも多くなり、そこから逆足でのゴールも決めている。持ち前の縦の動きに加えて横の動きも増え、プレーの幅は格段に広がった。3月19日のスタンダール・リエージュ戦で2ゴールを挙げ、キャリア初となる二桁得点に到達。
プレーオフでも1ゴール4アシストを決めて、最終的に11ゴール16アシストという成績。
こちらの記事でも述べた通り、とにかく今期はプレーの幅が広がったことと、チームの得点の形の一角として大いに貢献していることで、大きく成長している。
もはやベルギーリーグの枠を超えたと言っても過言ではなく、5大リーグへのステップアップがあってもおかしくない状態。本人的にもそういった希望は口にしており、今後の動向に注目したい。
現状名前が挙がっているのは同国内の強豪で優勝したクラブ・ブルッヘだが、ぜひ5大リーグへ移籍して欲しい。
鈴木優磨
2019年夏に鹿島アントラーズから、シント=トロイデンに移籍。
ベルギー2シーズン目となる今期は、開幕戦で試合開始2分でゴールを奪い、幸先の良いスタートを切る。しかし、その後のチームは絶不調が続き一時は最下位に順位を落とす中、先発を続ける鈴木にも批判の矛先が向けられた。
監督交代を機にチームが持ち直すと共に、鈴木もゴールやアシストで勝利に貢献する。シーズン後半はエースとしてチームメイトからも信頼が厚く、ゴールを量産。最終的に、欧州主要リーグにおける日本人シーズン最多得点記録を更新する17ゴール(※)と結果を残し、クラブの年間MVPにも選ばれた。
※その後、浅野拓磨が18ゴールに更新。
本人としては「UCLやUEFAヨーロッパリーグ(UEL)に出場するようなクラブ」を望んでおり、出場権を持ったチームへの移籍を望んでいる。
オファーとしては、トルコリーグの上位クラブから複数のオファーが入っているようで、リーグを3位で終えてUEL予選からの出場権を持つフェネルバフチェ、4位でUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(UECL)予選からの出場権を持つトラブゾンスポル、
欧州の舞台の出場権を持つチームから魅力的なオファーが入っているのはトルコからだが、UEFAカントリーランキングで9位のベルギーリーグに対してトルコリーグは13位。上位チームに移籍する分だけステップアップとは言えるかもしれないが、リーグのレベルとしては同等かやや劣る状況。
鈴木自身はセリエAへの移籍を希望しているように、5大リーグへ移籍した方がプレーレベルの環境としてはいいだろう。ただし、その場合には欧州の舞台への出場はあきらめることになるので、どちらを優先するかの選択になる。
シント=トロイデンとしては安売りする気はないようで、500万ユーロ(約6億6000万円)の違約金を設けている。トルコのチームの中にはこれを満たすような条件まで上げて交渉しているという話もあるが、はたして鈴木の去就はどうなるだろうか。
正直、今回の日本代表のメンバーに選ばれていないのが不思議なくらいで、日本人FWの中で今一番勢いがあると言える状態。これまでアンダーカテゴリーも含めて日本代表ではプレーしていないので、マッチするのかどうかを見てみたい。
森保監督としては注目しているようなので、次回以降に期待したいところだ。
原口元気
2014年夏にヘルタ・ベルリンに移籍してから、2018年冬にローンでのデュッセルドルフでプレーし1部残留に貢献した後、ハノーファーへ移籍。移籍後の初年度でハノーファーは2部に降格し、今期で2部での戦い2シーズン目を終えたが、13位と昇格は叶わず。
原口は2部のハノーファーにおいてチームの中心的な役割を担っており、プレーのレベル的にも給与的にも1部の選手に相当するような状態で過ごしていた。契約満了の今期、ハノーファーが1部昇格を勝ち取れば契約延長という話にもなったが、昇格を逃したことで原口は移籍への流れとなる。
5月27日にウニオン・ベルリンへの移籍が決定、希望通り1部の舞台へと活躍の場を移すことになった。
従来の左サイドのポジションに加え、日本代表では右サイドもこなしていたが、ハノーファーが2部に居る間にボランチ、そしてトップ下をこなしている。中盤のポジションすべてをこなす多様性を身に付けて1部に戻るが、ヘルタ・ベルリンではレギュラーの座を掴めるのか、それがどのポジションになるのかに注目したい。