2023年冬の移籍市場では実現しなかったが、既に噂があり、夏の移籍市場に向けて話題が大きくなっていくだろう注目選手の一人が久保建英。
レアル・ソシエダでの成長著しく、現在も保有権の半分を持つレアル・マドリードへの復帰の噂、あるいは育成年代に所属していたバルセロナが獲得を検討しているという。
そのあたりの実現の可能性についての考察。
外国人枠が空いたレアル・マドリード復帰の可能性は?
久保のレアル・マドリード復帰の噂は、これまでも事あるごとに出てきた。
しかし、3つの外国人枠がヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエス、エデル・ミリトンの3人のブラジル人で埋まっていることが、現実的な問題として立ちはだかっていた。
この3選手はいずれも、久保より少し前にレアルに加入しており、以後スペイ国籍の取得手続きが進められていた(ブラジルとの二重国籍)。
スペイン国籍が取得できれば外国人登録からは外れるため、レアルの外国人枠が空き、久保がその枠を使うことができる。久保のレアル復帰は、3選手いずれかの手続きが完了するのを前提としての話だった。
本来なら、久保が初年度マジョルカへのレンタルを終えた頃には、もうすぐ手続き完了となると言われていたが、これが新型コロナウイルスの影響を受けるなどして、なかなか完了しなかった。
この3選手のスペイン国籍取得手続きが、昨年9-10月に順次完了したとのことで、久保のソシエダでの活躍もあり、再びレアル復帰の噂が出てくるようになったという話の流れだ。
久保はソシエダに完全移籍したが、レアル・マドリードが保有権の半分を維持しており、買い戻し条項も設定されているため、レアル復帰は不可能な話ではない。
では、現実的に久保のレアル・マドリード復帰があるのかといえば、個人的には今シーズンオフにレアルが久保を取り戻そうとすることはないと考えている。
理由は、単純に久保がレアルでプレーするほどには実力が足りていないからだ。
レアル・マドリードで久保がポジションを争うとすれば、右ウイングしかない。そのポジションを争うライバルは、フェデリコ・バルベルデ、ロドリゴ、マルコ・アセンシオとあまりにも強力だ。
左ウイングの可能性もあるとは思うが、ここは成長を遂げたヴィニシウスが絶対的にポジションを確立しており、この控えの立場に甘んじることになる。
レアルでは、久保はインサイドハーフの可能性はほとんどないと思われる。
ルカ・モドリッチ、トニ・クロースなどが務めるこのポジションは、久保は体格面で明らかに不足しているものがあり、レアルのインサイドハーフは十分にはこなせないだろう。
このポジションは、今後カスティージャ(Bチーム)から上がってくるであろう中井卓大のほうが適正が高い。
といった状況を踏まえれば、直近でレアル・マドリードが積極的に久保を取り戻す可能性は限りなく低く、少なくとも今シーズンオフにはそれは起こらないと考える。
シャビ監督が本気で久保建英の獲得を検討するバルセロナ
ここに来て、バルセロナが久保の獲得を検討しているという。特にシャビ監督が、本気で久保の獲得を考えているという話だ。
久保はバルセロナの下部組織ラ・マシアで育成年代を過ごしており、いわゆるバルサの遺伝子を受け継いでいる。シャビ監督が目をつけている理由は、ここにあるに違いない。
当然ながら、バルセロナでもすぐにレギュラーポジションを確保するには、久保の実力は足りないというのが現状だろう。
それでもバルサのサッカーの根幹部分を既に会得しているという事実は、大きなメリットになる。バルサのサッカーへの適応は難しくなく、控えの立場として試合に出場する中で実力もついていくと予想される。
つまり、レアル・マドリード復帰に比べれば、バルセロナ移籍のほうが現時点で有り得る話ということになる。
具体的なポジションにしても、レアル同様に右ウイングはもちろんのこと、バルセロナならばインサイドハーフの可能性も高い。
バルセロナのインサイドハーフといえば、フレンキー・デ・ヨングもいるが、何よりペドリ、ガビという久保と同じような身長の二人も主力を務めるポジションだ。
過去のバルサを振り返っても、何よりシャビ監督自身、そしてアンドレス・イニエスタのコンビが黄金期に君臨している。
体格面で劣る久保でも、バルセロナであればインサイドハーフは十分に考えられる。バルサのサッカーの理念を既に理解しているという点を踏まえれば、なおさら計算できるはずで、シャビ監督の思惑もそういったあたりになるだろう。
副次的な話にはなるが、バルセロナにとって久保は裏切り者のレッテルを貼られているわけではないことが、今回の件ではっきりしたことは大きな収穫だろう。
レアルとバルサといえば、強烈なライバル関係にあり、両チーム間で直接移籍となった選手は大いなるブーイングにさらされる状況にある。
久保もレアルからのレンタル先の選手として、バルサの本拠地カンプ・ノウ・スタジアムのピッチに立った際には、少なからずブーイングがあった。
ただ、久保はバルセロナの下部組織で育成年代を過ごすも、不本意ながら一時帰国を余儀なくされ、Jリーグを経てレアル・マドリードの選手として契約した経緯がある。
プロの選手としてではなく、あくまで育成選手としてバルサに所属していた点と、間にJリーグをクッションとして挟んでいることが、それほど大きな批判にはならない理由なのだろう。
一部のファンは久保を裏切り者として捉えているのかもしれないが、少なくともバルセロナの幹部はそう考えていないことが明確になった。
久保建英のバルセロナ移籍の可能性は?
現実的にバルサが久保を獲得できるかどうかは、6000万ユーロと言われている契約解除金の他に、レアル・マドリードも絡んだ契約内容がどうなっているかが鍵になる。
昨夏の移籍の際に、ソシエダ側が求めたのは完全移籍であり、レアル・マドリード側としては将来的な久保の保有権を確保するために、レンタルもしくは買い戻しオプション付きでの完全移籍しか認めない姿勢だった。
久保本人がソシエダへの移籍を求めたことで移籍が実現し、両クラブの思惑を折半したと思われる契約内容は、報道されている限りではだいたい以下のような感じだったはずだ。
・選手とのしての保有権はソシエダ側が100%
→ 形としてはソシエダへの完全移籍
・レアル・マドリード側は久保の金銭的保有権の半分を維持
→ 他クラブに移籍の際、レアル・マドリード側は移籍金の半分を得る
・レアル・マドリード側に久保の優先交渉権がある
→ 久保がソシエダから他クラブに移籍する際に、レアル・マドリード側は同額以上で優先的に交渉できる権利がある
この内容で正しいとすれば、バルサが久保を獲得しようとすれば、レアル・マドリードは横槍を入れて久保を復帰させることが十分に可能だということになる。
もちろん、久保本人の意志に左右される面はあるだろうが、少なくともレアル・マドリード側が何もできずにバルセロナ移籍が成立することはない。
つまり、久保がバルセロナ移籍することは可能だが、そのためにはソシエダだけでなく、レアル・マドリードも説得する必要があり、実現のためのハードルは高いということだ。
久保建英の来季所属クラブの見通し
以上の状況を踏まえて、久保の移籍に関する今後の動きを予想してみる。
1.レアル・ソシエダ残留
2.バルセロナ移籍
3.レアル・マドリード復帰
2の移籍先に関してはバルセロナに限った話ではなく、久保の獲得を検討している国内外のクラブは他にもある。
しかし、久保はスペイン国内にこだわるだろうし、国内でソシエダを出る価値のあるクラブはレアル・マドリードかバルセロナしかない。
バルセロナからの本格的なアプローチがない、もしくはバルセロナからのアプローチがあってもソシエダが断れば、久保はソシエダ残留となる。
バルセロナが6000万ユーロといわれている契約解除金を満額払うか、それより低い金額でもソシエダが了承すれば、バルセロナ移籍へと傾く。
ただし、その場合はレアル・マドリードに優先交渉権があるため、レアル・マドリードが久保を買い戻す価値がある、もしくはバロセロナに渡したくないと判断すれば、レアル復帰となるだろう。
バルセロナの介入なしに、レアル・マドリードが久保の復帰に動くことはないと予想する。
バルセロナ移籍が実現するのは、ソシエダとレアル・マドリードの両者がそれを容認した場合に限られるということだ。実現の可能性はかなり低い。
ただ、久保本人の意思が尊重される契約内容になっていると思われる。
これまでレアル・マドリードからのレンタル先を決める際に、久保本人の意見が大きく尊重されている過去を踏まえると、その可能性は高い。
久保の意思次第では、バルセロナ移籍もあり得るかもしれない。
しかし、現実的に考えれば、今シーズンオフはソシエダ残留になると思う。
それでも、久保がレアル・ソシエダ、バルセロナ、レアル・マドリードというラ・リーガの有力クラブから去就先を悩めるような立場になったことは非常に喜ばしいことだ。
【追記】
5月2日、2-0で勝利したレアル・マドリード戦後のインタビューで、「来年は100%チュリ・ウルディン(白青=レアル・ソシエダ)」と明言。