長谷部誠と鎌田大地が所属するフランクフルトが、2021-22シーズンのUEFAヨーロッパリーグ(EL)を制覇して、悲願とも言えるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の出場権を獲得した。
そのフランクフルトのここ数年のELでの活躍と、CL出場権を獲得するまでの足跡を改めて振り返ってみたい。
2017-18シーズン DFBポカール優勝でEL出場権を得る
長谷部誠がアイントラハト・フランクフルトに加入したのが2014年の夏で、この時にはまだ乾貴士も在籍していた。
この頃は2部落ちから復帰して間もない時期ということもあり、フランクフルトは中堅以下の実力のクラブ。
2015-16シーズンはリーグ戦を16位で終え、入れ替え戦を勝利しての残留という状況。
このシーズンの終盤を指揮したニコ・コヴァチ監督がチームを立て直し、翌2016-17シーズンにはリーグ戦は11位ながら、DFBポカールは決勝でドルトムントに敗れるも準優勝と結果を残した。
コヴァチ監督に素質を見出される形で、長谷部がリベロのポジションでプレーし始めたのもこのシーズンのことだ。
そして迎えた2017-18シーズン、リーグ戦後半は充実した内容で好調を維持し、一時3位につけるなどCL圏内での争いを繰り広げた。しかし、終盤失速。なんとかEL出場権獲得を目指して戦ったが、最終的に勝ち点4差届かず8位に終わった。
長谷部はボランチで先発して、試合展開に応じてリベロにポジションを移すというコヴァチ監督の起用が当たり、チームの中で重要なタスクをこなしていた。しかし、31節の相手選手に対する肘打ちが悪質と捉えられ、リーグ戦最後の3試合を出場停止という不本意な形で終えた。
しかし、リーグ戦終了後に行われたDFBポカール決勝で、リーグ戦を制したバイエルンと対戦。長谷部はこの試合に先発すると、3-1で勝利して優勝を飾った。
コヴァチ監督は既に退任が発表されており、翌シーズンは対戦相手のバイエルンの指揮を執ることが決まっていた。DFBポカール優勝とリーグ戦で取れなかったEL出場権を置き土産に、フランクフルトを去ることとなった。
2018-19シーズン ELでの躍進と、好調リーグ戦でのCL出場権争い
ロシアW杯を終えた直後の2018-19シーズンは、フランクフルトにとって大躍進のシーズンとなった。
指揮官の交代もあり、序盤こそ低調だったものの中盤以降は安定した活躍ぶりを見せる。ルカ・ヨヴィッチ、アンテ・レビッチ、セバスティアン・ハラーを中心に強力な攻撃陣が機能し、DFBポカールは初戦で早々に敗退したものの、リーグ戦とELは好調を維持した。
長谷部は序盤こそW杯の疲労の影響と、新監督のアドルフ・ヒュッター監督の信頼が得られなかったことで出番を失っていたが、中盤以降はリベロを中心に出場を重ねる。
シーズン序盤の不調が嘘だったかのようにチームが連勝を続けたのは、長谷部が起用されるようになってからであり、チームを立ち直らせたのは長谷部の影響と言ってもよかった。
はっきり言って、このシーズンはリーグ戦の成績からCL出場権を獲得することは夢ではない、という状況にあった。27節から32節まで4位を維持していたが、残り2節で7位に転落、なんとかEL予選出場権だけは確保できたことは不幸中の幸いだが、それまでの好調さを考えると終盤数戦はあり得ないような失速ぶりだった。
原因としては、控えの層が薄く、控えを出すと明らかに戦力が落ちるのが目に見えており、主力が出ずっぱりという状況が続いた。シーズン終盤に来てそのツケが回ってきて、ガス欠と言えるような感じで勝ち点を取りこぼした。
一方のELでは最初から最後まで快進撃を続け、グループリーグは全勝1位通過。決勝ラウンドに入っても、インテル、ベンフィカといった強豪を破って準決勝進出。準決勝でチェルシーに敗れたものの、2戦合計2-2で延長の末PK戦まで持ち込んだ。プレミアリーグの強豪チェルシーを相手にがっぷり四つに組んで戦って敗れた格好。フランクフルトのELの活躍は、このシーズンから始まったと言える。
2019-20シーズン ELでの再びの活躍を感じさせたが、ベスト16で敗退
EL予選2回戦から出場となったフランクフルトは、勝ち進んで本戦出場すると、グループステージを2位で通過。決勝トーナメント・ラウンド32をザルツブルク(オーストリア)を相手に勝利したが、続くラウンド16バーゼル(スイス)戦の1stレグを0-3で落とす。
その後、新型コロナウイルス流行の影響を受け、5ヶ月近く経ってから行われた2ndレグも1-0で敗れたフランクフルトは、そのまま敗退した。
リーグ戦もパッとしたところがなく、中位争いを繰り広げた末に9位で終えた。DFBポカールは勝ち進んだものの準決勝で敗退。
この結果、翌シーズンの欧州カップ戦の出場権は得られないままシーズンが終了した。
2シーズン前にフランクフルトに加入した鎌田大地は、前シーズンを過ごしたシント=トロイデン(ベルギー)へのレンタルから復帰すると、主にトップ下のポジションでレギュラーをつかむ。中堅クラブの宿命として、前シーズン大活躍したルカ・ヨヴィッチ、アンテ・レビッチ、セバスティアン・ハラーが引き抜かれたが、その後の攻撃陣の一人としてチームに貢献。
EL決勝トーナメントのザルツブルク戦でハットトリックを達成するなど10試合6ゴールと活躍、EL男の片鱗を見せ始めた。