香川真司の新天地はシント=トロイデンに決定、香川再生の狙いとその課題点

12月にギリシャ1部PAOKを退団した香川真司の新天地が、ベルギー1部シント=トロイデンに決まった。
1月11日の加入記者会見では、新たなポジションに挑戦することが語られた。

ドルトムント以降の香川の問題点と、シント=トロイデンの香川再生の狙い

ドルトムントで出番を失って以降、香川の問題点は明らかで、フィジカル的な点とプレー位置が低すぎる点にある。トルコ、スペイン2部、ギリシャといったドイツよりもレベルが落ちた舞台でもレギュラーを務められなかった点を踏まえると、そのあたりの改善が見られないとベルギーの舞台でも同様になる可能性はあると思っていた。

ところが、入団会見で注目すべき点があり、シント=トロイデンでは、これまでのトップ下ではない新たなポジションでのプレーすることが語られたことだ。明確なポジションは語られていないが、ボランチに挑戦するのだろう。それがシント=トロイデン側からの提案で、香川がそこに魅力を感じて加入を決めたということ。

直近の3カ国のチームでは、香川はトップ下のポジションを任されており、明らかに全盛期のような前線での活躍を求められている。ところが、香川のプレー位置を見るとトップ下よりもかなり低い。
さすがに全盛期のようなドリブルは求められていないとは思うが、前線に近い位置で起点になったり、味方のお膳立てに対してゴールを決めるという役割を求められているはずだが、そのプレー位置ではそういった仕事は十分にできない。
どちらかと言うと、前線のプレッシャーのきついところから、プレッシャーのゆるい下の位置にボールを受けに降りてきてしまう、そういった場面が目につくようになった。
それは、香川に求められている役割ではないと、見ていて思っていた。これが、ある種「香川は、もう終わった」と言われる大きな一因だが、本人はそのことにどれだけ気づけていただろうか。

香川のような攻撃的な選手が、年齢とともにポジションを下げることは珍しいことではない。特にドリブラーは、怪我や年齢による影響でそうなることはある種自然なことと言える。
なので、シント=トロイデンがポジションを下げる提案をしたことは、ある意味目の付け所はいいと思うし、香川もそのことに魅力を感じてシント=トロイデン加入を決めている。

ボランチ香川真司の成否のポイント

さて、香川コンバートの狙いは悪くないのだが、ボランチとして成功するためには課題もある。香川の現状を踏まえると、それはかなり大きなものに感じる。

元々のポジションであるトップ下からボランチへコンバートして、成功した例を考えてみたい、中田英寿と中村憲剛を見てみよう。

中田は完全にボランチへとコンバートしたわけではないが、何度かボランチ転向が試されている。ローマ時代にトッティとの併用のため、日本代表ではジーコジャパンの時代に3バックの際に中村俊輔と共存させるため、どちらも苦肉の策には違いない。前者はすぐにあきらめられたものの、後者は実際に実行されている。
中村憲剛はJ2 川崎フロンターレに入団した頃はトップ下だったが、フロンターレがJ1に昇格する前にはボランチにコンバートされ、日本代表でもボランチとしてプレーしている。晩年には再びトップ下のポジションに戻っているが、中村憲剛と言えば名ボランチという印象のほうが強い。

二人に共通するのは、広い視野と戦術眼を持ったパサーであること。パスを武器にしている選手なので、2列目のトップ下から3列目のボランチに移ることでパスの選択肢が増えるメリットこそあれ、デメリットは特にない。
守備的な要求に対する適応には、当然ながら苦労したとは思うが、自身の攻撃的な特徴に関しては特に苦労する面はないのだ。

これに対して香川はどうかと言えば、ドリブルは衰えたものの、前線での起点、ゴール近い位置からのフィニッシュ、といった辺りが自身が持っている武器になる。つまり、香川は前線に居てこそ自身の能力を発揮するプレーヤーなのであって、下がった位置では相手にとって驚異とはならない。
ボランチのポジションに下がれば、香川は新たな武器を身に付けなければならないということだ。おそらく今後は、パサーとしての能力を伸ばしていかなければいけないということになるだろう。

もうひとつ、ボランチとなれば当然ながら守備の強度も求められるようになる。
中田は細身な割にフィジカルとボディバランスに優れ、外国人選手相手でも当たり負けをほとんどしない強さを持っていた。ジーコジャパンの3バックの際に中田がボランチを努めたのは、中村俊輔よりも中田のほうがフィジカル強度に優れていたからだろう。中村俊輔がボランチでは心もとない。
中村憲剛は体格的には劣っていたが、ポジショニングやボールの受け方などを工夫して、相手よりも有利な態勢で立ち回るテクニックに優れていた。
香川もこの点は大きな課題になるはずで、そのあたりをどのようにして克服するだろうか。

もうひとつ、香川は90分間を通してプレーすることが少ない。
ドルトムントでゲーゲンプレッシングをしていた頃は、オフェンスの選手として後半途中で交代というのは理解できる。しかし、プレー位置が下がり気味になった以降に関しても、フル出場をしていた試合はあまり記憶にない。これはスタミナ的に問題があるように思えるが、オフェンス側からディフェンス側のポジションに移ることで、その点は問題にはならないのだろうか? という懸念もある。

現在ベルギーリーグ13位でプレーオフ進出の望みの薄いシント=トロイデンとしては、残りレギュラーシーズンは3ヶ月ほど13試合残されている。その間に、香川が復調できる兆しが見えるかどうかに注目したい。

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