フランクフルトの好調と長谷部の出場の関与

前回記事で、今シーズンのフランクルトの好調をお伝えしたが、長谷部誠も十分な貢献している。
まずは、長谷部の今シーズンの出場状況と、チームの試合結果を見てみよう。

× 9/12 DFB 1回戦◯2-11860ミュンヘン
○ 9/19 第1節△1-1アルミニア
○ 9/25 第2節◯3-1ヘルタ・ベルリン
○ 10/3 第3節◯2-1ホッフェンハイム
○ 10/18 第4節△1-1ケルン
○ 10/24 第5節●0-5バイエルン・ミュンヘン
○ 10/31 第6節△1-1ブレーメン
○ 11/7 第7節△2-2シュトゥットガルト
× 11/21 第8節△1-1ライプツィヒ
× 11/28 第9節△3-3ウニオン・ベルリン
× 12/5 第10節△1-1ボルシア・ドルトムント
長谷部出場とチームの成績1

リーグ戦開幕からフル出場が続き、チームも2勝2分けの上々の滑り出しを見せる。
ところが第5節バイエルン戦で0-5の大敗を喫し、続く2戦を引き分けると、それまでフル出場を続けていた長谷部は出番がなくなる。勝てないチームの何かを変えようという意味と、前回の記事でも述べた通り若手有望株のエヴァン・ヌディカに出番を与えたい、といったあたりの指揮官の思惑がなんとなく見える。

しかし、その後も引き分けが3試合続き、第10節ドルトムント戦後の会見で、アディ・ヒュッター監督が長谷部の引退に触れるコメントがあり、注目された。

「マコトはもうすぐ37歳になり、おそらく夏には現役キャリアが終わるだろう。なので、マコトがいなくてもプレーできるようにならなければならない」

たしかに長谷部の引退には触れているが、前後の部分も踏まえると、けっして不要といった意味での発言ではないことは十分に分かる。どちらかというと、逆の意味である感じで「長谷部がいなくなっても問題ないように」という感じの発言のように見える。
しかし、長谷部の去就にメディアが注目することになったのは事実だ。
本人は、その後のインタビューで「それについてはまだ決めてません」と述べており、ヒュッター監督に引退の考えを伝えたわけではないことが分かる。
実際、次節のヴォルフスブルク戦前の会見でもヒュッター監督は「上手く伝わらず、解釈の余地を与え過ぎたかもしれない」と述べている。

このあたりの時期に長谷部の去就に関する話題が出るのは、ここ3シーズンほど恒例になっている感はある。ブンデスリーガで最年長のプレーヤーであれば、それも当然のことだろう。
しかし、そのたびに好調なプレーを見せ、「契約延長すべき」という論調を勝ち得ている。そのことは衰えないどころかより円熟していく長谷部のプレーの質、リーダーシップを見れば妥当だろう。

前回の記事でも述べた通り「長谷部をリベロで使うと、ヌディカを外さなければならい」という状況が、試合メンバー表を見てもよく分かる。長谷部がリベロで出場している試合は、ヌディカは出番なしかメンバー外になっている。しかし、若手有望株のヌディカは、そろそろ売り時が近づいており、コンスタントに出場させておきたいはずだ。
実はこのヌディカの成長には長谷部が一役も二役もかっている。2シーズン前フランクフルトにやってくると、当時は素質は十分ながら経験値がまったく足りていなかった。プレーが途切れると、すぐに隣のリベロ長谷部が指示・指導・叱責などを熱い調子でまくしたて、それをヌディカが熱心に聞いているという場面は度々見られた。ヌディカ自身もインタビューでは、長谷部からたくさんの貴重なものを与えてもらっていることを述べていて、「フランクフルトの皇帝」にして守備陣のリーダーに対する尊敬や信頼は大きい。

ただ、ヒュッター監督にすれば「長谷部もそろそろ潮時か」という考えは、多少なりともよぎっていたに違いない。そのあたりが、それまで本人がまったく去就について触れていなかったにもかかわらず、長谷部の引退について口にしてしまったことに影響しているのではないだろうか。

× 12/11 第11節●1-2ヴォルフスブルク
○ 12/15 第12節△3-3ボルシアMG
○ 12/19 第13節◯2-0アウグスブルク
○ 1/2 第14節◯2-1レヴァークーゼンボランチとして今期初先発
△ 1/9 第15節◯2-0マインツ後半32OUT
× 1/12 DFB 2回戦●1-4レヴァークーゼン
○ 1/17 第16節◯3-1シャルケ
△ 1/20 第17節△2-2フライブルク後半21OUT
△ 1/23 第18節◯5-1アルミニア後半26OUT
△ 1/30 第19節◯3-1ヘルタ・ベルリン後半31OUT
△ 2/7 第20節◯3-1ホッフェンハイム後半28OUT
長谷部出場とチームの成績2

しかし、この一件は指揮官が長谷部について考えを改めるいいきっかけにもなったようだ。
第11節ヴォルフスブルク戦を落とすという結果になり、次節では長谷部をリベロで復帰させた。この試合は結果的には3-3と引き分けたが、後半36分にキャプテンのダビド・アブラハムが2枚目のイエローで退場するまで、3-1と優位にゲームを進めていた。
その次も同様に長谷部を起用すると勝利した。フランクフルトにとって、第3節以来の久々の勝利だ。

次の第14節で、ひとつの転機が訪れる。
ボランチのファーストチョイスだったセバスティアン・ローデが累積で出場停止ということもあり、長谷部は今季初ボランチでスタメン出場すると、このゲームを勝利で飾り連勝。長谷部のボランチ起用は、ヌディカのセンターバック併用の他にも、大きな効果があった。
ボランチでコンビを組んだジブリル・ソウは、「長谷部の横でプレーすることは簡単で、すごく助けてもらった」といったことをコメントいる。ジブリル・ソウはセバスティアン・ローデとのコンビでは自身の特徴をあまり活かせてはいなかったが、長谷部とのコンビでは快適にプレーできているようだ。

活躍をした長谷部だったが、ローデの出場停止明けで、次節のマインツ戦は先発落ちをするのではないか? という予想もあった。しかし、長谷部はボランチで先発をしてジブリル・ソウと再びコンビを組むと、2-0の勝利に貢献する。後半32分までのプレーで、ローデと交代した。
以後は、次節でフル出場したあと、以降の試合ではボランチで先発、後半途中でローデと交代という起用が続き、その間の無敗の連勝に貢献し続けている。それまで主力のローデを押しのけて、ボランチのポジションのファーストチョイスになっていると見える。
後半途中でローデと交代するのは、長谷部の疲労の考慮とローデの調整、両方の意味だろう。

ちなみにリーグ戦連勝中に、DFBポカールの2回戦があり敗戦しているのも興味深い。長谷部はベンチに居たまま出場しておらず、ボランチはローデがフル出場している。ただ、他にも主力の何人かを休ませている感じなので、チームとして全体的にターンオーバーをしたということなのだろう。

こうして見てみると、今期のフランクフルトの調子は、長谷部の出場具合が大きく関わっているのが分かる。年末までは、長谷部とヌディカが併用できないジレンマを抱えていたが、年明けからのボランチ起用で解消。同時に、それまでくすぶりがちなジブリル・ソウの本領発揮につながっている。
今後もこのまま行くとは限らないとは思う。特にキャプテンを務めていたDFダビド・アブラハムが1月に引退したことで、再びリベロでの起用もあり得るのではないだろうか。
いずれにしろ、長谷部は今後も好調を維持して、フランクフルトの躍進を支えて欲しいところだ。

キャプテンの後任については、アディ・ヒュッター監督はそれほど重要視しない発言をしつつも、シーズン終了まで長谷部が暫定的に主将を務めるとしている。元々守備陣をまとめるサブキャプテン的な立場にあり、ダビド・アブラハムがピッチに居ない際にはキャプテンマークを着けることが多かったので妥当ではある。ただ、指揮官からの信頼が再び揺るぎないものであることも垣間見える。

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