4-3-3のシステム変更は収穫でオーストラリアに勝利するも、監督交代の必要性は残る

鈴木優磨や三笘薫はなぜ招集しない? メンバー選考や選手起用は保守的すぎる

一方で、メンバー選考には疑問がある。今回の当初の選考メンバーでは、MF登録ながら南野拓実もいるが、FW登録は大迫勇也とオナイウ阿道の二人だけ、あとから古橋亨梧が追加招集された。しかし、古橋は負傷から復帰したばかりで、コンディション的には十分とは言えない。所属元セルティックのアンジェ・ポステコグルー監督も、疑問を呈して嘆いているほどだ。

大迫はもちろんのこと、オナイウも古橋もこれまでに招集経験があり、メンバー選考において保守的すぎると言わざるを得ない。半年以上前からずっと思っているが、ベルギーであれだけ得点力を誇る万能FWの鈴木優磨が、なぜ未だに未招集なのだろうか?

もう一人、東京五輪でコンディション的な問題から十分な活躍に至らなかったとは言え、最終試合の3位決定戦で、途中出場から存分に持ち味のドリブルと得点力を見せた三笘薫をなぜここで招集しないのだろうか?

1点、2点がとにかく欲しいという現状の日本代表で、この二人を招集しないという人選が分からない。負傷明けの古橋は一旦休ませて、招集すべき人材は他に居たはずだ。

この試合で、フォーメーションシステムは変更したが、起用メンバーはいつもの顔ぶれで、新顔は東京五輪上がりの田中碧くらいなものだった。森保監督の選手選考・起用はあまりにも保守的と言わざるを得ない。

オーストラリア戦勝利で森保監督留任だが、次の監督候補は必要では?

このオーストラリア戦を落としていれば、2位で本戦出場の望みすら見通しが立たなくなる状況で、3位でプレーオフ(※)すら怪しくなってくる。監督交代の話題に拍車がかかると見られていたが、勝利したことで森保監督の首はつながった。日本サッカー協会の田嶋幸三会長も続投を明言している。
 ※A組3位とのプレーオフ、大陸間プレーオフを勝ち抜かなければならない

しかし、後任の監督の選定はしておくべきだと個人的には思う。
理由はふたつあって、ひとつはやはり森保監督でW杯本番は不安だということだ。森保監督はメンバー選考でも、試合の戦略や選手起用でも保守的すぎて、本番は相当にきびしいと感じる。
今の最終予選もそうだが、ましてW杯本番となれば、相手は十分すぎるほどにこちらを研究してくる。相手の予想を覆すサプライズがほぼない森保監督は、そもそも向いていない。このオーストラリア戦では、4-3-3というサプライズもあって勝つことができたが、それが今後も続くとは思えない。

もうひとつの理由は、過去の日本代表のW杯を振り返ってみたときに、「直前で大きな変化があったときに好成績を収めている」ということだ。
決勝トーナメントに進出した3大会を振り返ってみよう。
2018年ロシア大会では、予選突破を決めたヴァヒド・ハリルホジッチ監督を本番直前に解任、西野朗監督に交代し、メンバー選考や試合戦略はそれまでとガラッと変わった。
2010年南アフリカ大会、岡田武史監督のもと、不振にあえぐチームは本大会直前にメンバー・システム・試合戦略のすべてを一新する大きな変革があった。
2002年日韓大会では、監督の交代もなく、メンバー選考にもそれほど大きな変更はなかった。しかし、システム的には小さいながらも、割と大きな変更を意味することが起こっている。代名詞のフラット3の守備ラインはフラットではなく、ディフェンスラインとボランチの間にボールが入ると、3バック中央の選手が飛び出してボランチと挟み込む動きをしている。本番直前の苦戦から、選手たちがフラット3に改良を加えて蘇らせている。

一方で直前でほとんど変化がなかった2大会では、グループリーグで敗退している。変化がないということは、十分に研究されやすく、相手にとっては対策を立てやすいということだ。
2014年ブラジル大会では、アルベルト・ザッケローニ監督のもと、本番に至るまでの4年間に強さを保ち、主力メンバーもほとんど固定されたまま挑んだが、グループリーグで敗退となった。
2006年ドイツ大会では、ジーコ監督のもと「黄金のカルテット」という耳触りのいい言葉と共に中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一といったタレントの才能に頼り切った戦略のまま本番に突入し、グループリーグで惨敗した。敗因は他にも色々挙げられるが、本番直前に効果的な変化を生み出せなかったことは確かだ。

1998年フランス大会については、初出場で完全に実力・経験不足という要因が大きいため、除外しておく。

今後、最終予選であと一敗、あるいは引き分け等で勝ち点の取りこぼしが続けば、最終予選途中での監督交代となる可能性はあるだろう。
しかし、そうならずに森保監督のまま無事本大会出場決定となったとしても、最終予選終了後に監督を交代してW杯本番に挑むというのは十分にありで、むしろそうすべきなのではないかと感じる。今回のカタールW杯は開幕が11月21日であり、3月末の最終予選終了から本番までに、新監督でチームを熟成させるだけの時間的余裕は十分にある。

監督交代や選考に関しては、日本サッカー協会はいつも後手後手に回りがちなのだが、今回はそういった英断ができるだろうか。あるいは、11月以降後半戦を迎える最終予選で、森保監督が本番を指揮するにふさわしいだけのものを見せることができるだろうか。そのあたりが今後注目だ。

タイトルとURLをコピーしました