ニュージーランドにPK戦での辛勝で、準決勝進出

東京五輪のグループリーグ最終節、日本はニュージーランドを相手にスコアレスのまま延長戦を終え、PK戦4-2で勝利した。
準決勝進出を決めて、メダル確定まであと1勝となった。

日本対ニュージーランド、試合展開

スタメンは、右SBが出場停止の酒井宏樹の代わりに橋岡大樹、左SBに旗手怜央、左サイドハーフが相馬勇紀、ワントップに林大地。他は所定の主力がメンバーに入った。

前半10分、ショートコーナーから、右サイドで久保建英がクロスを入れずに近くの林にショートパスを選択。狭いところを縦に抜ける形になった林がグラウンダーのクロスを入れると、ファーサイドに構えた遠藤航がシュート。押し込むだけでよかったのだが、ボールはクロスバーを越えた。絶好機を外したことで遠藤も他のメンバーも頭を抱える。

以降、日本はいい形は作るものの、ニュージーランドの守備が堅く、決定的なチャンスには至らない。
一方のニュージーランドは、前線の選手の個の力を中心にワンチャンスを活かそうとするが、こちらも日本の守備陣が的確に対応して崩れない。

31分、久保がエリア内の右から入れたクロスをニアサイドから堂安律がシュートするも、枠の右に外れた。
33分、相馬が左サイドからゴール前に向かって斜めのクロスを入れるも、走り込んだ堂安にはピタリとマーカーがついており、ボールはキーパーに処理された。
34分には、左のニアサイドに進出した相馬がマイナスに折り返すも、ニアサイドの堂安に対してボールの位置が悪く、ジャストミートには至らずにシュートはクロスバーを越えた。
日本は立て続けに好機は作ったが、ニュージーランドの守備に綻びは見られない。

35分に、今度はニュージーランドが決定機を迎えるも、シュートは枠を捉えられない。
その後は互いに好機は作るものの、どちらも決定的なチャンスにまでは至らず、前半は終了。

後半に入っても前半同様の展開が続く、攻勢をかける日本に対して、堅守のニュージーランドは選手の個の力で攻撃する。
互いに1点が欲しいため、時間の経過とともに局地的な競り合いは激しさを増していく中、ニュージーランドは徐々に攻勢を強めている。

69分に選手交代、ワントップが林に代えて上田綺世、相馬に代えて中山雄太が入り、左サイドバックの旗手を一列前に上げる。

70分に、久保が右サイドのハーフウェーラインから斜めに長い距離をドリブルで持ち上がり、そのままペナルティーアーク左手前からミドルシュートを放つも、キーパーに楽々とセーブされた。
相手3人に囲まれていたとはいえ、こういった形のシュートを決められると選手としての評価は跳ね上がる。特にトップ下のポジションであれば尚更だし、ワールドクラスの選手はこういったシチュエーションで決めてくる。久保のシュート技術は、まだそこまでには至っていない。
73分、田中碧がペナルティアーク右手前からミドルシュートを放つも、バーの上を越えた。
74分、久保がペナルティエリア左に侵入してシュートを放つも、キーパーが正面で弾く。
日本は立て続けに好機を得たが、ニュージーランドのディフェンスも的確に反応しており、シュートコースが制限されることでキーパーも余裕を持って対応している感じがする。

76分に、日本に2度目の決定機が訪れる。
橋岡が右サイドをえぐり、深い位置からクロスを上げると、旗手が相手デフェンスに競り勝ってヘディングシュートを放つ。これは、惜しくもクロスバーを越えた。

78分、ニュージーランドがペナルティエリア右角からゴール前に入れたクロスを、冨安健洋がスライディング弾いたボールがゴールへ向かう。オウンゴールになりかねない場面だったが、わずかに枠を外れた。

81分、エリア内右から堂安がフェイントを入れて、ディフェンスの足元を抜くクロスを入れる。これをゴール前の上田がシュートしたが、GKに弾かれてしまう。
日本の3度目の決定機も、ゴールを割ることができなかった。

その後も90分まで日本は圧倒的に攻め続け、ほとんどの時間を敵陣内でプレーするような状況が続いた。ニュージーランドの全員守備が功を奏し、延長戦へと突入。

延長に入っても日本はいくつか好機は作ったが、ゴールラインを割るには至らない。
次第に両チームともに疲労が見え始め、120分間スコアレスのまま、勝負の行方はPK戦へ。

PK戦では、4人全員が決めた日本に対して、ニュージーランドは2人目を谷晃生がセーブ。
するとニュージーランドは3人目もプレッシャーを感じたのか、枠の上に外した。
PK戦4-2の決着で、日本が準決勝にコマを進めた。

日本が優勢に試合を進めるも1点が遠い展開は、グループリーグ初戦の南アフリカ戦を思い起こさせた。日本はA代表もそうだが、堅く守られると、それを打ち破るのがどうにも苦手なようだ。
そのあたりは、ニュージーランドが日本をよく研究して戦略を立ててきたように見える。それだけ、日本は今大会で強さを発揮しているわけだが、それ故に苦手な展開に持ち込まれてしまった。
吉田麻也が「普通にやれば勝てるという雰囲気を危惧していた」と語っていたが、A代表でもキャプテンを務め、五輪の舞台は3回目の吉田は、さすがに経験値が高い。

それにしても、日本には90分内で3度の決定機はあった。
最初の決定機を決めていれば、ゲーム展開はまったく違ったものになっていただろうし、2,3度目を決めていれば南ア戦と同様の展開になっていたはずだ。
3つのうち1つでも決めていれば、ニュージーランドは必ず前に出てくるため、追加点のチャンスも広がっていたはずだ。それができなかったために、堅守に苦しめられて120分間戦うはめになってしまった。

この試合で冨安健洋がイエローをもらったため、累積警告2枚で準決勝は出場停止。他1枚の選手はここでリセットされるため、準決勝では累積警告を心配する必要はない。
準決勝では、酒井宏樹が出場停止開けで復帰する。

決勝トーナメント1回戦の他試合結果

スペイン対コートジボワール戦は見応え充分な試合展開。
序盤の10分にコートジボワールがコーナーキックからラッキーな感じで先制する。
30分にスペインのクロスを、コートジボワールのDFが胸トラップでGKに取らせようとするが、これを競っていたスペインの選手が上手く足を合わせてゴールに押し込む。
その後は、スペインが優勢に試合を進めるも、決定機を活かせずに同点のまま時間が経過し、アディショナルタイムに入った直後にコートジボワールがゴールを決めて勝利を手にしたかに思われた。絶望の表情を浮かべたスペインだったが、ここから交代出場したばかりのラファ・ミルが同点のゴールを奪う。
延長に入って98分にハンドからのPKをスペインが決めて、勝負あり。117分と121分にもラファ・ミルが決めてトリプレッタ(ハットトリック)を達成、スペインが5-2で勝利した。

メキシコ対韓国戦は、序盤から乱打戦の様相を呈した。
12分にメキシコが先制すると、韓国が20分に追いつく。メキシコは29分に勝ち越し弾、39分にPKを決めて、前半を3-1と2点リードして折り返した。
後半開始早々の51分に韓国が1点追いつくも、メキシコは54分、63分に追加点を上げて5-2と3点リードして試合を決める。
試合終盤の84分にメキシコがダメ押しの追加点を上げ、韓国はアディショナルタイムに1点を返したが、6-3でメキシコが韓国を圧倒した。

ブラジル対エジプト戦は1-0でブラジルが勝利。
ブラジルの攻撃力からするともう1,2点取ってもおかしくはないし、それだけのチャンスもあったが、1点を危なげなく守りきって順当に準決勝進出を決めた。

この結果、準決勝で日本はスペインと対戦、もう一方の試合はメキシコ対ブラジル。
勝った方は決勝進出とともに銀メダル以上が確定、負けた方は銅メダルをかけて3位決定戦に挑む。

スペインとブラジルが引いて守る展開は考えられないので、ニュージーランドや南ア戦のようなことは危惧する心配はない。
スペイン戦は直前のテストマッチ同様に、スペインがポゼッションをして、日本はそれを受けてのカウンターという展開が予想される。
ブラジルとは、おそらくガチンコの実力勝負という試合展開になるだろう。
メキシコはグループリーグで戦ったときは、序盤に2点先制できたために攻めてきたが、そうでなかったら引いて守る作戦だったかもしれない。メキシコと当たった場合には、今回のニュージーランド戦や南ア戦の教訓を生かして、引いた相手に対してどう戦うのかということを検討しておいた方がいいかもしれない。

日本は、やはりニュージーランド戦を120分戦わずに90分で決着をつけたいところだった。スペインも120分戦っているので、疲労の点では互角といえば互角だが。

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