2021年夏、日本人選手の海外移籍動向4

2021年夏の日本人選手の海外移籍動向、その4。

チーム事情が絡んだ移籍

チームが降格することや、金銭的事情、指揮官の交代などのチーム事情により移籍となる選手。

堂安律

2017年夏にガンバ大阪から、オランダ1部のフローニンゲンへレンタル移籍。買取オプションも行使されて2シーズンを過ごした後、PSVアイントホーフェンへと移籍した。
PSV所属2年目となる今期は、ドイツ・ブンデスリーガに昇格したアルミニア・ビーレフェルトへと買取オプション付でのレンタル移籍となった。

欧州初上陸となった1年目にブレイクを果たしたものの、2年目は期待されたほどの活躍とはいかなかった。移籍したPSVでも、堂安本来の能力が十分に発揮されたとは言い難く、環境を変えた今期のブンデスリーガは水が合ったようだ。
昇格組のアルミニアはシーズン序盤から最後まで、終始残留争いをする苦しい展開ながら、堂安は主力として常にチームを引っ張るプレーを見せる。最終節のシュツットガルト戦ではゴールを決めて、チームを残留に導いた。

アルミニアとしても、堂安としても、買取オプションを行使して完全移籍となることが望まれた。
シーズン中からも堂安の年俸はアルミニアの予算の中でも大きな割合を占めているという話は出ている。まして買取オプションの500万ユーロ(約6億6000万円)は到底出せないということで、PSVとの値下げ交渉次第という話だった。買取オプションに加えて、堂安の年俸などを加味すると、それはアルミニアの総予算の2,3割に相当する額になるという。
結局、値下げ交渉は不調に終わったようで、アルミニアは堂安の獲得からは撤退、堂安もアルミニアのサポーターに対してお別れの挨拶を自身のインスタグラムに掲載した。

PSVに戻るという可能性もあるが、堂安自身はブンデスリーガの方が気に入っている様子で、ブンデスリーガの他クラブへの移籍やレンタルとなるのではないだろうか。
マインツが関心を示しているという報道も出てきている。

吉田麻也

7シーズン半の長きにわたってプレーしたプレミアリーグのサウサンプトンから、イタリア・セリエAのサンプドリアへレンタルを経て移籍。守備の国イタリアの中堅チームで、レギュラーに近い活躍を続けている。
今年1月には来期終了までの契約を更新しているが、ここに来てカリアリへのトレードによる移籍の話が出てきた。たしかに、吉田をサンプドリアに招いたクラウディオ・ラニエリ監督が今期で退任、あるいは年齢的なことから、このタイミングでの移籍があってもおかしくはない。
他にはフィオレンティーナが興味を持っているという報道もある。
ただ、セリエAで吉田の守備力は十分に評価を得ており、仮に移籍となっても、それほど悪い状況なることはないだろう。

今期の吉田麻也のスーパープレー。
エリア内でシュート体制に入ったクリスチアーノ・ロナウドの背後から、抜群のタイミングでシュートストップ。ボールにしか触れておらず、完全にノーファール。
倒れ込んだロナウドのまさかの表情と、吉田のドヤ顔にも注目。

浅野拓磨

2016年夏にプレミアリーグのアーセナルに完全移籍したが、労働許可が下りなかった関係で、ドイツ・ブンデスリーガのシュトゥットガルトで2シーズン、ハノーファーで1シーズンを過ごした。ドイツで十分な活躍ができずに、セルビア1部パルチザンへ完全移籍となった。

パルチザンで2シーズン目の今期は躍進。シント=トロイデンの鈴木優磨が更新した「欧州主要1部リーグにおけるシーズン日本人最多得点記録」17を18に再度更新。カップ戦も含めれば公式戦21ゴールと活躍した。

ところがシーズン終了前、リーグ戦残り4試合、カップ戦の決勝を前にして、浅野側から契約を解除した。浅野は「度重なる給与の未払い等」を理由としており、クラブ側はこれを否定する状況。クラブ側はFIFAの管轄機関に訴訟を起こすとも声明しており、今後の成り行きがどうなるか分からない。
一説には、中東のクラブからの高額オファーがあり、移籍させられそうだったことも一因ではないか、というものもある。ドイツやフランスのクラブからの関心はあったものの、財政事情から中東クラブの高額オファーにクラブ側が合意した、というものだ。

退団後は、スペイン2部アルメリアからの興味も報じられているが、トルコからの噂話の方が盛んだ。
今期4位のトラブゾンスポルを皮切りに、2位のガラタサライ、昇格するギレスンスポル、1位のベシクタシュ。ギレスンスポルとは、既に契約をしたとの一部報道もあるが、真相はどうだろうか。いずれにしろ、トルコ国内では浅野が注目株になっていることは想像に難くない。
一方で浅野本人は5大リーグでのプレーを希望しており、オファーを待っているか、水面下で交渉が進んでいるのではないかと推測する。そちらが不調に終われば、トルコのクラブに決まるのではないだろうか。

個人的には、中堅以下であっても5大リーグに決まって欲しいし、次いでトルコの上位チームといった優先順位で、昇格組のギレスンスポルはないと思われる。
トルコの上位クラブは来期欧州のカップ戦の出場権を確保しており、ベシクタシュはUCLの本戦出場権、ガラタサライはUCL予選2回戦からの出場権を持っている。
いずれにしろ、新シーズンが始まる前に移籍は決まるはずなので、今月中には来期の所属チームは決まるだろう。

大迫勇也

ブンデスリーガ1部で7シーズン目を終えたが、壁を突き破って活躍するような感じが一向にしない。圧倒的な存在感を誇る日本代表とは対照的で、やはりCFとして日本人選手が欧州で活躍する難しさを感じずにはいられない。
昨季はシーズン終盤に活躍をして1部残留に貢献したが、今期は再現ならず、最終節で無念の降格が決まった。

来期に関しては、大迫自身も「FWとして使ってくれるチームを探すのが第一」と語っている通りだと思う。ブレーメンでは、なかなかCFとして使ってもらえる機会は少なく、中盤に回されることの方が多かった。本人は「まずは欧州で」と言っているが、降格するブレーメンでFWとして使ってもらえなかったのだから、5大リーグ以外からしか声はかからないのではないだろうか。
それならJリーグで、という線もあるかもしれないが、厄介なのはフリーの状態ではないということだ。ブレーメンとの契約は1年残っており、移籍金が必要で200万ユーロ(約2億6000万円)と言われている。移籍先が欧州にしろ、Jリーグにしろ、この額は大きな障害になる。

クラブは大迫を手放したいのか、それとも2部で戦ううえでの戦力とみなしているのか、そのあたりの情報が伝わってこない。

乾貴士

2015年夏にドイツからスペインへと戦いの舞台を移した乾は、日本人選手にとって鬼門とも言えたラ・リーガの舞台で、初めて成功したと言える選手になった。
本当に小さなクラブのエイバルが、1部に初昇格をしてから7シーズンを過ごした中で、乾は通算5シーズンをチームの戦力として奮闘した。

しかし、エイバルが降格となったことで、乾はフリートランスファーとなり、新たなチームを探すことになった。契約条項として2部に落ちればフリーになれる条項もあったようだが、そもそも乾の年俸は一度エイバルを出て、べティスに移籍した関係でエイバルにとってはかなりの高額になっており、チームの財政事情から見ても残留の線はなかった。

2月には中国のクラブから高額年俸のオファーがあり、エイバルの降格決定後にスペインの他チームからの関心の噂もあったが、まだ具体的な話は出てきていない。
フリーで移籍金が発生しないだけに、良い移籍先が見つかることを期待したい。

武藤嘉紀

所属元イングランドのニューカッスルから、今期はスペインのエイバルへとレンタル移籍。
移籍当初から多少の違和感を覚えたのは、得点不足のエイバルがストライカーとして武藤を獲得したことだった。武藤はそれなりに優秀なフォワードだとは思うが、フィニッシャーとしてゴールを奪うことが得意かと問われれば、それは違う気がした。
結果リーグ戦1得点、カップ戦2得点と、やはり期待された得点不足を補うことはできなかったが、プレー面でチームからの信頼は得られて、リーグ戦26試合、カップ戦3試合中2試合出場と、それなりに出場機会は得られた。

エイバルが1部に残留して、翌シーズンに完全移籍をすることが、武藤本人、エイバル、そして所属元のニューカッスル、3者にとって満足のいく結果になったはずだった。
エイバルが残留を逃したことで、武藤は一時的に所属元へ戻る予定になっている。しかし、昨シーズンは完全に構想外で、来期も監督は変わらずに状況が改善する見通しは暗い。新たな移籍先を探すことになると思われるが、今のところこれといった移籍先は挙がって来てはいない。

岡崎慎司

奇跡のプレミアリーグ優勝を果たしたレスター・シティで4シーズンを過ごした後、スペイン2部へと戦いの舞台を移した。
最初に契約したマラガはチーム側の不手際で契約することができず、その後ウエスカと契約、ブンデスリーガのマインツ時代のようにCFとして得点力を発揮して、チーム得点王の12得点を決めて1部昇格に大きく貢献した。

1部に上がって活躍が期待されたが、欧州主要リーグ3か国で得点を果たしたが、この1ゴールでシーズンを終えてしまった。ケガの影響や指揮官の交代の影響もあり、十分な出場機会が得られたとは言えず、消化不良な面は否めない。

ウエスカとは契約満了で退団となるが、岡崎に引退の意思はなく、欧州での活動を継続する意向。新たな所属先を探すことになるが、まだ具体的な噂は聞こえてこない。

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