冬の移籍市場が閉まる直前に飛び込んできた南野拓実の移籍のニュース。
直前に出場機会がほとんど得られなかったことから、メディアでは「今シーズン終了後の放出」の噂も囁かれ始めていた。それが、「この冬の移籍市場で来たか」と思わずにはいられなかった。
発表自体はレンタルだったが、シーズン終了後買い取られるか、そうならなければ別のチームに売却されるのではないか、というふうにも感じられた。初報では、単に「サウサンプトンに期限付き移籍」とだけだったので、そのあたりの詳細が分からなかった。
しかし、続報からは、当初の印象とはまったく異なる状況であることが徐々に分かってきた。
・買取(完全移籍)オプションがついてない
・要求された買取オプションをリバプール側は拒否
・当初サイドバックのネコ・ウィリアムズの交渉をしていたが不調に終わり、移籍終了間際に南野の話が浮上
・南野の出場時間が増えれば、レンタル料が減額
・クロップは南野を手元に置いておきたかったが、サウサンプトンならばと貸し出しに応じた
買取オプションがついていないということは、サウサンプトン側があくまでチーム事情からの一時補強と見ているか、リバプール側があくまで一時的なレンタルで手放す意思はない、ということだ。後者であることが判明すると、安心できた。
サウサンプトン側の状況が分かってくると、南野の出場機会は十分に得られそうな状態にあり、システム的にもリバプールより合いそうな雰囲気がある。そのあたりの状況を踏まえて貸し出しに応じているのが伝わってくる。
事前に南野の移籍情報がまったく出ていなかったのは、本当に電撃的に決まったようで、南野の話が出てきたのは、移籍最終日になってからだったという。
ただ、ザルツブルクから移籍の際に、サウサンプトンも獲得は狙っていたようで、ラルフ・ハーゼンヒュットル監督は「リバプールに移籍したときは、本当に落胆した」とコメントしている。電撃的に決まってはいるが、以前から評価していたことも、短時間で決まった理由のひとつなのだろう。
50万ポンド(約7200万円)の移籍金は発生しているが、出場時間に応じて減額されていく条件が付けられているということなので、当然これは南野の出場機会を後押しするはず。
クロップ監督の談話によると、「サウサンプトンから話が出るまで、南野を手放す意味を感じるクラブがなかった」「サウサンプトンは理に適っていると感じた」といった感じ。
同時に、年末以降に南野が出場機会がほとんど得られなかった理由が、初めて分かった。
クロップは「南野に十分な出場のチャンスを与えられなかった」ということも述べていて、その理由は背の高さにあった。「ディフェンスに背の高さが足りないのに、そこに南野を送り出すのか? メディアはそこにそれほど注目しない」というようなことだった。
要するに南野の出場機会の少なさは、ファン・ダイクの負傷に代表されるCBの相次ぐ故障離脱にあった。
言われてみれば、クロップは別の談話で「チアゴ・アルカンタラのアンカーでの働きに満足しているが、守備の強度でヘンダーソンやファビーニョに劣る」といったようなことも述べていたが、これも要するに身長の話だ。CBに欠員が出なければ、チアゴはアンカーではなくインサイドハーフで起用しているはずだった。今シーズンのクロップの大きな悩みは、CBの相次ぐ故障にあって、それが攻撃陣にも影響を及ぼしていたということなのだ。
ということであれば、この状況は今シーズン中に改善の見込みは少なく、南野はリバプールでの出場機会は伸びることはなかっただろう。
サウサンプトンのラルフ・ハーゼンヒュットル監督は、以前はRBライプツィヒを指揮している。南野の前チームのザルツブルクとは同じレッドブルグループで、この2チームは一貫した方針を掲げているので、南野がサウサンプトンに移籍してフィットはしやすいという事情はある。
サウサンプトンで出場機会を得られるのであれば、この移籍は南野にとってプラスになるはずだ。
サウサンプトンと言えば、1月4日の対戦で1-0でリバプールを撃破したあと、ハーゼンヒュットル監督が膝をついて涙した姿が印象的だった。
一方で直近のマンチェスター・ユナイテッド戦で、開始早々に退場者を出し、なす術なしといった感じで0-9と惨敗。
今夜のニューカッスル戦での出場が期待される南野がどう活躍するだろうか。