準備万端を感じさせたU-24スペイン戦と五輪本番の見通し

五輪本番前、最後のテストマッチとなったU-24スペイン戦。優勝候補の強敵を相手に1-1のドローで終わったが、選手の調整的に五輪本番に向けて準備万端整った感じに見えた。
五輪本番の見通しも合わせて述べたい。

U-24スペイン戦

メンバー的には、スタメンをほぼベストメンバーで構成して、後半開始からベンチメンバーと大幅入れ替え。
ベンチから投入が遅かったのは、コンディション的に不安のある上田綺世が66分から、前戦で登録のなかった旗手怜央が長めの出場で、中山雄太との交代が後半80分となった。
出番がなかったのは、第3GKと目される鈴木彩艶と、合流が遅れた三笘薫の代わりに五輪メンバー外で登録された山本理仁の2人のみ。GKは2人、フィールドプレーヤーは五輪メンバーをフルに使い切って本番に備えた形になった。

序盤はスペインにボールを支配され、攻め込まれる場面が多く見られたが、完全に切り崩される場面はそれほどなく、無難に守りきっている。
試合の経過とともに日本もチャンスを作り始めた。
42分、左サイドを独力で突破した久保建英、ペナルティエリアへの侵入は防がれたが、そこからマイナスにクロスを入れると、マーカーに競り勝った堂安律がダイレクトにシュートを放って豪快にゴールを決めた。

1-0とリードした状態で前半を折り返すと、日本は本番初戦を見据えて主力を下げてベンチの控えと入れ替える。OA枠の3人、冨安健洋、堂安も下がった状況で後半開始を迎えた。
対するスペインも後半開始、そして後半途中からとメンバーを入れ替えて、日本と同じ合計9人を交代した。
控え中心のメンバー構成になっても、強豪スペインを相手に十分健闘できていたが、流石にA代表主軸の3人が一斉に抜けた最終ラインは不安な点は見られた。
63分にスペインがペドリ(ペドロ・ゴンザレス)を投入すると圧倒される場面も出てくる。78分に、そのペドリからのパスで右サイドが攻略され、ファン・ミランダが入れたクロスをカルロス・ソレールが決めて、同点に追いつかれる。
日本にも後半に得点のチャンスはあったが、ゴールはならず、1-1のドローで終えた。

ボールの支配率は、日本の34%に対してスペインの66%。スペインは持ち味通りのボールポゼッションを発揮して、日本はカウンター中心の予想通りの試合展開。
コンディション的に日本の方に分があったとはいえ、優勝候補スペインを相手に引けを取らない試合を十分に見せた。
後半の最終ラインの問題は、本番初戦を見据えて主力3人を一斉に下げたことによるものなので、本番ではそこを考慮しながらの交代やローテーションを組むだろうから、それほど問題にはならないのではないか。
必要な交代をすべて行って、五輪初戦に向けてメンバー全員の準備が十分に整ったテストマッチ最終戦となったと感じる。

東京五輪本番への期待

ホンジュラス戦とスペイン戦両試合ともに、スタメンにはその時点でのベストメンバーを送り出してきた。五輪初戦はベストメンバーをスタメンに並べるのは間違いない。
GKは結局、谷晃生と大迫敬介のどちらを主軸に置くのか分からないが、フィールドプレイヤーのベストは完全に固まっているし、森保監督もそのことを隠す様子はないようだ。ボランチの田中碧と板倉滉、ワントップの3人、ここが誰を使ってくるかは分からないが、いずれにしろ両ポジションは2戦目以降ローテーションで回していくことは確実だ。

今回のメンバーを見ていて、全体的に万全という感じがする。
こんなに万全のメンバー構成で挑めるのは、シドニー五輪以来ではなかと思うし、シドニーよりも万全ではないかとも思う。

まず、スタメンのメンバー構成が申し分なく強力なことは間違いない。
1,2年前には派遣が危ぶまれていた久保と堂安が揃ってメンバー入りしたのはもちろんのこと、OA枠の3人がこれほど理想的に招集できたのはシドニー以来なかったことだ。

次に、控えのメンバーが登場した場合を想定しても、ベストのスタメンと比べて、それほど戦力ダウンをする印象がない。もちろんOA枠の3人は別格なので、そこは考えないことにするが、控えの選手が出てきてスタメンに混じっても、明確にそこが弱点となるような感じがまったくしない。それだけ選手層の厚さを感じさせるのが、今回の東京五輪メンバーだ。
決勝を除いて、すべてが中2日という試合日程の中で、ローテーテョンやターンオーバーで控えのメンバーの出番は十分に予想されている。海外やA代表で実績十分の久保や堂安、冨安の活躍はもちろんだが、その他のメンバー、特に控えのメンバーの活躍にも注目したい。そういったメンバー活躍が、過密日程を勝ち抜いていく際に重要になってくるに違いない。
短期決戦の主要大会にありがちな「主力選手の疲労を考えて休ませたいが、代えの選手との実力差がありすぎるために、ずっと使い続ける」「メンバーには入ったが、結局一度の出番もなく大会を終えた選手」といったような感じにはなりそうもない。そう感じさせるメンバー構成だ。

他の多くの参加国は日本ほどベストメンバーは招集できていない。今年はユーロ(ヨーロッパ)、コパ・アメリカ(南米)が直前にあり、CONCACAFゴールドカップ(北中米カリブ海)は現在開催中ということもあり、A代表にも呼ばれている選手は招集が難しくなっている。
例えば、フランスはキリアン・エムバペが参加に意欲を見せていたが、ユーロ後の疲労に加えて自身の去就問題から参加を見合わせている。
ブラジルはネイマールがコパ・アメリカとOA枠での五輪の両大会への出場を希望していたが、五輪に選出されなかったのは疲労を考慮してで間違いない。
A代表の大会のないアフリカ勢のエジプトでも、キーマンとしてモハメド・サラーのOA枠招集を望んでいたが、所属元のリヴァプールに拒否されている。
U-24ドイツ代表は、100人の選手をリストアップして招集の打診をしたが、結局フィールドプレヤーは15名しか招集できていない。GK3人も含めて、計18名のメンバー構成だ。
とはいえ、今回対戦したスペインにしても、バルサのペドリのような能力的に明らかな選手もいる。ただし、そのペドリもユーロに出場しているので、ベストコンディションとは言い難い。
日本は、これらの選手のようにトップレベルのクラブで主力になれていないから招集できたというのもあるが、久保や堂安、冨安、そしてOA枠も希望通りの3人を招集できたことは心強い。日本人選手としての現有戦力として、ベストなU-24プラスOA3人でメンバー構成できたと言って過言はないだろう。

気候的な面でも、日本は不利にはならない。
国内組は、夏はJリーグ中盤戦の真っ盛りの時期で、この高温多湿のコンディションでのプレーにはもちろん慣れている。
欧州組はすっかり欧州の気候に慣れて、高温多湿のこの時期の気候に苦戦している面は否めないが、彼らとて日本を出るまではこの気候でJリーグをプレーしていたわけだ。気候の異なる外国からやってきて、短期間で慣れなければいけない他国の選手に比べれば、十分なアドバンテージはある。

グループリーグに強敵が揃ったことや観客の後押しのないことなど、不安な点がないこともないが、メンバー的に万全で、ホームの利のある今大会は十分に期待できる。
今から本番の開幕が待ち遠しい、そんな気分だ。

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