東京五輪代表のメンバー18名が発表されたあと、新型コロナウイルスによる影響等を考慮して4名の追加となり、合計22名のチーム編成となった。
この五輪メンバーの構成の考察と、海外移籍の動向について。
五輪組のメンバー構成考察
メンバー構成的には、18人の段階でもサプライズはそれほどなく、順当に選出された感はあった。
ただ、日程的にターンオーバーが必要な場面は必ずあり、各選手を休ませることを考えると、やはり18人では妥協せざるを得ない部分はある感じがした。
これが、登録人数が22人に拡大され、4人追加されたことで、各ポジョションごとにほぼ2人配置できる体制が整い、不安がなくなった感じがする。
元々バックアップメンバーとして帯同していた4人がそのまま追加されたことを考えると、首脳陣としても、当初からこの22人が必要なメンバーと想定していたのだろう。
ポジションごとにメンバーを見ていく。
GK
大迫敬介と谷晃生がメインで、追加の鈴木彩艶は経験を積ませる意味合いが強いと思われる。GKは代えが効かないため、22人なら3人目の登録は妥当。
右SB
酒井宏樹のOA枠は、想定はしていたが優先順位は低いと思っていた。それよりはFWの大迫勇也が当確、DFを2人OA枠で入れるよりはGKかと思っていた。
酒井を入れる意味は、単純にそのポジションに有力な選手がいないことと、酒井が入ることで守備力強化はもちろんのこと、右サイドの攻撃で圧倒できることだろう。ボランチに遠藤航、CBに吉田麻也が入れば、残るポジションで弱めなのはFWか右SBということになる。また、右サイドハーフは堂安律、久保建英、三好康児が想定されるが、ここに酒井が加わることで攻撃に厚みが出ることは間違いない。
バックアップは菅原由勢も考えられたが、橋岡大樹が選出。
酒井も橋岡も右SBだけではなく、CBもこなせるため、3バックへのシステム変更への対応も柔軟だ。
CB
OA枠の吉田麻也と冨安健洋のA代表コンビで盤石。というように想定されていたが、冨安のケガによるコンディション面が不安要素としてある。
所属のボローニャでは、リーグ戦終盤に戦列復帰したが、明らかにパフォーマンスは悪く、ケガの影響がありありと見えた。本番までにどれだけ調子を戻せるだろうか。
バックアップは18人の段階では、板倉滉と中山雄太のユーティリティプレーヤー2人が担当する想定だったと思われる。町田浩樹と瀬古歩夢が追加されたことで、CB専門のこの2人でバックアップは盤石になった。冨安の状態に不安が残るだけに、町田と瀬古の存在は重要だ。
左SB
攻撃的なポジションもこなす旗手だが、この五輪メンバーでは左SB一本が求められるだろう。他に左SBを専門とする選手がおらず、2列目の選手の充実度を考えれば、それが妥当な役目になる。
バックアップはCB陣に不安がなくなったことで、不慣れなポジションながら中山雄太が担当するだろう。中山は五輪の間は左SBの控えに専念することなる。
全体を見たときに左SBは唯一不安要素があり、旗手が戦線を離脱するような事態になると戦力ダウンは否めない。
ボランチ
OA枠の遠藤航をメインに相方は田中碧、バックアップの板倉滉にも不安はなく、ターンオーバーも含めて3人でうまく回せるはず。
3人で回しきれなかった場合でも、中山雄太がいるために問題は生じないだろう。
個人的には、板倉滉の出番が十分にあるといいと思う。
トップ下・右サイドハーフ
このポジションは堂安律、久保建英、三好康児の3人が得意としているので、3人で回していくことになるはずだ。
久保のトップ下、堂安の右サイドが定番だが、この2人は試合中のポジションチェンジも容易で、息のあったコンビプレーを見せる。
バックアップの三好も能力的には不安はなく、3月のアルゼンチン2連戦ではコンビ面で不安なところはあったが、その後五輪代表の活動期間は十分にあったため、本番までには払拭されるだろう。
左サイドハーフ
相馬勇紀と三笘薫が担当、どちらも実力的に申し分はない。
本職ではないが、堂安、久保、三好の3人もこなせるため、このポジションに不安はまったくない。
2列目は人材的に潤沢で、3バックに移行すれば3人から2人に減るポジションなので、7人のメンバー構成で何も不安はない。
18人の段階でバックアップメンバー4人の中にMFが一人もいなかったのは、そういったこともあるだろう。
FW
18人の段階で前田大然と上田綺世の2人だったのは、多少不安を覚えた。二人ともコンディション的には万全とは言い難いので、一人はコンディションのいい選手にしたほうがいいとは思っていた。
追加メンバーで林大地が入ったことで不安はなくなった。個人的にも3月のアルゼンチン戦でゴールが良かった林には期待。上田綺世も、2019年のコパ・アメリカからどれだけ成長したのかに注目したい。
追加メンバーの4人が入ったことで役割が変わったのは、板倉と中山。
FWとGKは元々もう一人欲しい状態だったところが補強された感じで、CB専門の町田と瀬古が入ったことでCBの布陣は万全になった。
ユーティリティ性の高い板倉と中山はメインだったCBの控えの役割から、それぞれボランチと左SBの控えに専任することに役目が変わった。
個人的には板倉はCBよりもボランチの方が合っていると思うし、特にこの五輪代表チームではボランチが適任。アルゼンチン戦で2ゴールを叩き込んだように、得点力を活かすにはCBよりもボランチの方がいい。
個人的に他に注目する選手は、当落線上だった三好と三苫。
三好は2019年のコパ・アメリカで活躍したあとベルギーに渡ったが、今ひとつブレイクしきれていない。この五輪で活躍をして、再び上昇のきっかけをつかんで欲しい。
三苫は今Jリーグで一番熱い存在で、五輪で世界を相手に自慢のドリブルがどこまで通用するのかが注目のポイント。
最注目は、やはり久保。
少し前の記事でも書いたが、ラ・リーガの最終節ひとつ前の試合でヘタフェの残留を確定させるゴールを決めたあと、「実は久保の今シーズンは、ここから始まるのではないか」と感じた通りになるのではないだろうか。それくらい、U-24日本代表での存在感を放っており、五輪本番での活躍を期待させる。
振り返れば、2019年のコパ・アメリカ参戦中にレアル・マドリードへの移籍が決まり「これで東京五輪の出場は難しくなったかもしれない」と言われ、昨シーズンマジョルカで活躍しては似たような反応はあった。
それが、結局新型コロナウイルスの影響で東京五輪は1年延期され、今シーズンの久保はビジャレアルとヘタフェの両クラブで十分な出番は得られなかった。つまり、今シーズンの久保はそれほどは疲弊していないということだ。五輪本番に向けて、コンディション的な不安は少ないだろう。出場すら危ぶまれた東京五輪の舞台で久保のプレーを見ることができ、それが万全の状態であることは、これほど好ましいことはない。
所属元のレアル・マドリードの状況を合わせて考えれば、来季も久保はレンタルに出される可能性が高い。五輪本番での活躍を足がかりに、より良いレンタル先のオファーを勝ち取って欲しいものだ。