十分な成果が確認できた日韓戦

3月25日の代表戦は、本来「2022W杯2次予選兼2023AFCアジア杯予選」としてミャンマーと対戦するはずだったが、新型コロナウイルスの影響とミャンマーの政情不安により延期となった。代わりに親善試合として韓国との対戦が組み込まれ、日韓戦の実現となった。

韓国側はトッテナムのソン・フンミン、ライプツィヒのファン・ヒチャンがいないということに加え、イ・ガンインのゼロトップ戦術が不発ということもあり、全体的に日本優位の展開で、日本のゴールが脅かされるような場面はあまりなかった。
日本の守備陣は韓国攻撃陣の不調以上に好調で、吉田麻也、冨安健洋のイタリア所属CBコンビが万全なことはもちろん、ボランチの遠藤航、守田英正コンビが相手の攻撃の芽を着実に摘み取っていた。

奪ったゴールも、攻め込んだ状態、カウンター、セットプレーとバリエーションも揃っており、攻撃の形も豊富だ。ゴールに至らなかった場面でも、自陣からのカウンターの他に、ボールを奪ってのショートカウンター、サイドから相手を崩してといった感じで、偏ることなく多くのパターンでチャンスを創出していた。

この試合は、各ポジションの全体的なバランスはすごく良かった。
大迫はポストプレーは相変わらず貴重な存在で、やはり日本代表に置いては替えの利かない不動のワントップといえる。
ゲームメーカーの柴崎は不在だったが、トップ下の鎌田、後半代わった江坂がゲームメイクを担当。左サイドに回った南野は持ち味の内に入ったポジション取りのプレーを多く見せ、鎌田との2シャドーを形成するようにも見えた。この2シャドーの形は、鎌田としても所属元のフランクフルトと同様のため、やりやすそうに見えた。いずれにしろ、鎌田・南野のコンビはトップ下・ワントップの関係同様に良好な様子で、息の合ったプレーを披露した。
柴崎の代わりにボランチに入った守田が攻守で存在感を発揮し、そのプレースタイルはボランチとしての王道だった。
両サイドは森保体制になってから主軸の中島、堂安が両者ともに内に切れ込むタイプで、シュートに魅力はあるものの、正直バランスは悪いと思っていた。今回は南野が左サイドに回って、基本的には内に入るがサイド攻撃もできる。右サイドの伊藤純也は内にも入るが縦への突破が得意な選手だ。両サイドのバランスはだいぶ良かった。

守田のプレーを見ていると、トルシエジャパンの頃に全盛だった稲本潤一や戸田和幸を彷彿とさせた。守備の強度があり基本的には守備を重視しているが、要所でゴール前まで攻め上がってのシュート、あるいは隙あらばミドルシュートでゴールをうかがう。守備的なポジションでありながら常に相手のゴールを脅かす脅威を与える、世界的な基準で見ればボランチの選手としてあるべき姿を守田は示してくれた。
この試合でも評判通りのデュエルの強さを軸にした守備能力に加え、要所で好パスを通す戦術眼を披露した遠藤航。ダブルボランチの仕事ぶりは、チームに安定感とゲームの優位性をもたらしていた。特に遠藤航は、長谷部誠が代表を引退してどこか不安定になっていた中盤に、再び安定をもたらしているように見える。

右サイドハーフの伊東純也も個人的にはずっと注目していて、堂安の影で出番が限られていた感があったが、ようやく代表でも一定の評価を得られたのではないだろうか。持ち味の縦への突破に加えて、最近では内に切り込んでのプレーやシュートも身に付けてきている。
代表デビューでゴールを決めた右サイドバックの山根のプレーも光った。ピッチの中央へポジション取りして、前残りもするようなプレースタイルは、世界の強豪と戦う際には一考の余地はあるが、少なくともアジアで戦ううえでは有効ではないだろうか。ある種マルセロ的な攻撃的SBのスタイルは、直近のW杯アジア予選においては、かなり有力なオプションになるのではないかということだ。
伊東と山根のコンビも申し分ないもので、互いの長所を理解したうえで活かしあえていた印象だ。

他にも初代表でデビューを飾った選手が見せ場は作っており、代表に定着できる存在になれるかどうかは今後の活躍次第だろう。

後半22分、プレーとは関係ないところで冨安が相手選手の打撃を受けて倒れた。歯が折れて出血しておりダメージは大きかったが、よく見ると直前で互いに腕を使っての小競り合いがあり、その流れで振り払うような行為で放った手がバックブローの形で冨安の顔面を強打している。恐らく相手としては肩や胸のあたりを振り払おうとした感じなのだろうが、それが顔面に入ってしまったのではないだろうか。
いずれにしろ結果があの状況なのでイエローが出てもおかしくない場面だったが、カードは出なかった。
試合後の冨安のコメントでも、既に謝罪のメッセージがあったことと、「相手も故意ではなかったと信じたい」といった感じで、大きな問題になることは望んでいない様子。
このワンシーンだけが、ある種日韓戦を象徴するような出来事だったかもしれない。

次戦は3月30日「2022W杯2次予選兼2023AFCアジア杯予選」モンゴル戦で、モンゴルのホームゲームだが、モンゴル側の申し出により日本での無観客試合となっている。
モンゴルは25日のタジキスタン戦を0-3で落としており、この敗戦で既に2次予選敗退が確定している。

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